<魚類解剖実験法1:ニジマス >

<目 次>
 *予習復習:概念図実験前と後の確認(各部位の器官/臓器)
 A. 概要
  1. 実験魚ニジマス(rainbow trout)について
  2. 必要物品
  3. 解剖実験の準備・注意事項
  4. 魚体に対する基礎知識(体部位と主要な器官臓器)
  5. 解剖の手順:概要
 B. ニジマスの解剖工程(操作/手順)
  1)腹腔部、2)腹腔内器官の観察と記録、3)口腔・鰓腔部、  
    4)囲心腔部、5)頭蓋腔部、6)眼球、7)腎臓・脊椎・脊髄
 C. 実験魚に対する配慮
 D. 実験前と後の確認(各部位の器官/臓器)
 E. 用語


<復習:概念図>

左前頭としてイメージするサカナは「食する・釣る・愛でる」ものであり、親しみのある動物である。しかし、動物学的には脊椎動物の基本を顕示する最重要動物でもある。つまり「サカナとヒトは何が同じでどう違うか」を考慮することは生物学の基本である。体型の違いからかなり差違を感じることも頷けるが、「サカナを腹面から見るとほぼ同じである」という観点もある。では、試してみよう。

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(画像をクリック: 左 Fig0   中 Fig00   右 Fig000) 
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(画像をクリック: 左 Fig1   中 Fig2   右 Fig3 )
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A. 概 要

<1. 実験魚ニジマス(rainbow trout)について>

  1. 鮮度を保持したまま、数量を問わず、サイズにバラツキがなく、周年、宅配便などで容易に入手可能な「ニジマス」は、解剖実習の実験動物として優れた教材である。解剖実験に適したサイズは25-30cm程度である。このサイズのニジマスは他の魚種に比較し骨が柔らかいことから解剖実験には適している。
  2. フナ、コイ、メダカなどの「無胃魚」とは異なり、充実した「胃/消化系」を顕示するサケ科魚類は、比較解剖学的な観点、つまり、ヒト、ネズミ、カエルなどとの比較に適した実験動物と位置づける事ができる。
  3. 試験研究魚としても一般的であるため、幅広い生物学領域の知見・情報を提供することが可能であり、発展展開においても優れている。
  4. ニジマスは人工飼料のみで累代完全管理が可能な有用魚種である。
  5. ニジマスは北米原産の淡水魚であり、成熟後は多回産卵性で、本邦では100年以上の飼育の歴史を持つサケ科魚類であり、「マス」の名を持つ「サケ(サケ科魚類)」である。アメリカのニジマスは降海性を示す「スチールヘッド」と呼ばれる系統がいる。
  6. 餌料状態で体色や肉色が異なる。アスタキサンチン(カロチノイド系物質:甲殻類が多量に含む)を多量に摂餌している個体は赤みの肉質となるが、いわゆる白身サカナである。
  7. ニジマスは欧米などにおいても一般的な魚種であり、またフライフィッシングなどの対象魚であることから、グローバルスタンダードとしての側面を持つ。

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<2. 必要物品:主な道具>
解剖セットと関連備品であるが、以下の物品で代用も可能である。

1)良く切れる文具用ハサミ、 2)料理用ハサミ、 3)文具用替え刃式ナイフ、 4)ピンセット、 5)先の丸い割り箸、 6)タオル、 7)紙タオル、 8)ポケットティシュ(3パック)、 9)70%エタノール(火気に注意)、 10)新聞紙、 11)食器用トレー(解剖台)、 12) 食器用洗剤(手洗い脱臭用)、 13) スポイト、 14) 小型のビニール袋(ゴミ袋)
必要に応じて、13) マスク、14) 脱臭スプレー

注意:解剖用ゴム手袋は魚体の保持/固定に難がある(滑る)ので基本的には使用しない。


<3. 解剖実験の準備・注意事項>

  1. 解剖を行なう魚は新鮮な個体を使用する。実験魚が生きている時には、麻酔剤 フェノキシエタノール(液状の試薬:2リッターの水に対して約2mlの試薬を加える:数分で鎮静する濃度)で実験魚を完全に過剰麻酔させる(10分くらい放置する)。取り上げても動かない事を確認の上で実験を開始する。
  2. 又は、クーラーボックスなのに多量の氷を含む氷水中に長時間放置する(過度の氷冷麻酔)。実験前には必ず動かなくなっていることを確認する。
  3. 実験実技を行なう前には、魚体表面の水分や粘液などをタオル・紙タオルで拭き取る。必要に応じて70%エタノールを吹きかけ、粘液等を凝固させ拭き取る(必要に応じ、希釈した「お酢」を噴霧し臭気をおさえる)。
  4. 「臭い」に強い抵抗を感じる人は「マスク」などを用いる。解剖操作中は手指に粘液など生体由来物質が付着する。よって、身近なところに「手拭きタオル」を装着すること。魚類の解剖では魚体を手指で保持する必要があるため、グローブ(手袋)を用いると粘液などのため手元が滑りやすくなり時に危険である。よって、用いない方が安全である。
  5. 魚類は粘液分泌のため滑りやすい。よって、魚体を切開する時は、タオルや紙タオルで魚体を確実に保持固定して操作を行なう。但し、刃先の前に手指が位置することがないよう十分に注意する。
  6. 手指に粘液が粘着した場合は、石鹸や水で洗い流す前に、紙タオル等で拭き取る、又は70%エタノールや希釈酢酸を噴霧し粘液を凝集させた後に取り除くのが理にかなっている(アルコールアレルギーの人は要注意、火気厳禁)。
  7. 出血したらポケットティッシュ大の紙タオルを出血部位へ軽く押しあて、拭き取る(事前に適切な大きさの止血用の紙タオルを用意しておく)。
  8. 出血等で諸臓器が不明瞭になったら水道水(本来は生理食塩水)で洗い流し、その後に操作を進める。
  9. 解剖前や術中、気分がすぐれない時には必ず休憩すること。無理して実験を進めてはいけない。周りの人の状態にも配慮してあげること。
  10. 解剖中は不必要に声を出さない。テキストを参照しながら自分のペースで行う。あわてず騒がず行うことが肝要。
  11. 途中で時間切れになっても困ることではない。同じ実験時間内に「何を学ぶか」である。時に、少しだけ勇気も必要。
  12. 解剖実験には「成功したとか失敗とか」はない。自分自身との対話である。じっくり考えながら行うこと。但し、疑問等の記録は忘れずに。

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<4. 魚体に対する基礎知識(体部位と主要な器官臓器)>

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  (画像をクリック: 左 Fig4   中 Fig5   右 Fig6 )
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(画像をクリック: 左 Fig7  中 Fig8  右 Fig9 )
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(画像をクリック: 左 Fig10   中 Fig11   右 Fig12 )
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<5. 解剖の手順:概要>

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(画像をクリック: 左 Fig13   中 Fig14   右 Fig15 )
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  1. 対象とする実験魚について、外部形態や体部位、更にそれらの名称について、模式図(外部形態)を参照しながら確認(記録)する。魚体の全体像をノートに模式図として簡潔に描く。または、「管状構造に基づく動物体制(概念図Fig3)」を白地図として利用し解剖を進める。意識した事項、例えば陸上動物との差異などに対する疑問等は大切にする(思いついたらその場でメモする、箇条書きにする)。
  2. 魚類解剖の手順としては、外部形態の観察に直結する呼吸系(口腔・鰓腔・鰓構造)を手始めにするか、腹腔内構造(主に消化系・泌尿器系・生殖系など)を先にするかは、時間配分などに配慮し決める。
  3. 出血が予想される新鮮な実験魚の時は腹腔部から操作をはじめる。但し、食道を切り離す際は大量に出血するので、紙タオル処理や水洗を行い、観察し易い状況を維持する。
  4. 下記の手順、本編では、(1)腹腔内構造→(2)囲心腔内構造→(3)口腔・鰓腔内構造→(4)頭部中枢神経系構造→(5)その他(腎臓・椎骨摘出など)の構造の順である(模式図Fig14を参照)。「囲心腔」それとも「口腔・鰓腔」の順は状況に応じ変更する。本解説は概要であるので、各自の状況や観察に基づき実験ノートの内容(記述)を充実させること。
  5. 「骨格標本の作製」等を念頭に置いて解剖を進める「操作」については別紙参照。
  6. 本解剖操作に必要な所用時間は約2時間と考える。途中で休憩を入れること。

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B. ニジマスの解剖操作と手順

<1. 腹腔部>

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(画像をクリック: 左 Fig16  中 Fig17  右 Fig18 )
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(画像をクリック: 左 Fig19   右 Fig20 )
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  1. 下記の操作を行なう時は、上の挿入図も参照しながら進めること。
  2. Fig17:肛門前(1)の位置(皮膚)にハサミを当て切れ目を入れ、腹腔内にハサミを差し込む。開口部を作る(矢印方向に、腹腔がわずかに露出するまで少しずつ体壁を切る)。
  3. Fig18:腹腔内に少しハサミを差し込み、 矢印(2)方向に、体壁を持ち上げながら正中線上を切り進む。途中、腹腔が充分に露出したら切開した体壁を左右に広げ、腹腔の内部状態を確認する(消化管や時には白い塊の脂肪などが見えるはず)。更に切り進め胸鰭付近/囲心腔(心隔膜)の前で止める。
  4. Fig19:切開した体壁を摘み上げながら、(1)の部位から矢印線(3)に沿って、内臓等を傷つけないように注意しながら、また露出状態を確認しながら体壁を切り進める。薄い半透明の腹膜が内部を被っているときには丁寧に取り除く。この時、腹腔背面(背骨の下)に細長く位置する赤黒い腎臓は傷つけないように配慮し切り進み、食道上部の腹腔前部まで体壁を切る。
  5. Fig20:遊離した左腹部の体壁を持ち上げ、鰓蓋の後方(4)で切り取る。腹腔内の臓器等が観察し易い状態にしてから、露出した腹腔内構造を観察し、特徴的な器官を識別する。適度に内臓を動かし、例えば肝臓を持ち上げ、更に観察と簡単な記録を作る。概略的に観察が終了したら、下記 2. 腹腔内器官の観察と記録、を行う。

2. 腹腔内器官の観察と記録

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(画像をクリック:左 Fig21  中 Fig22 右 Fig23 )
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  1. Fig21, 22:鰾(浮き袋)を破損しないように配慮しながら、また腸管膜の在り様も確認しながら腹腔内部の臓器を丁寧に広げてみる。必要に応じて腸管膜を切り、消化器系の全体が展開するよう更に広げる。この時、はじめに腸後部(肛門寄り)の腸管を、広げた指先で手前に引き出すようにする。更に腸前部(腸上部)・胃・肝臓などを引き出し、消化器系の全体を広げる。
  2. 白っぽい脂肪組織(塊)がある時には、丁寧に取り除く。幽門垂の周りに付着している膵組織を確認する(但し難しい)。血管系(門脈など)も確認する。
  3. 腎臓の様態(形や部位など:但し、腎臓の摘出はB-7で行う)を確認する。輸尿管・膀胱を確認する。
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  4. 以下に示すA〜Fについて、以下の1)〜5)の事項を確認・記録する。
      1)名称/英名、2)形・大きさ、3)部位・連絡、4)色、5)触診状況)
      □A 食道、胃、幽門垂、腸、腹膜、腸管膜
      □B 肝臓、胆嚢、(膵臓)、
      □C 脾臓、血管系(肝門脈、肝静脈など)
      □D 鰾、
      □E 腎臓、輸尿管、膀胱
      □F 生殖腺(精巣・卵巣)
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  5. 鰾(浮き袋)を引き出し、食道との連結部のところで切り離し、丁寧に摘出する(端部を管状に切り取り、その入り口からスポイトで水を入れてみる)。
  6. 生殖腺がある場合は摘出する。
  7. 腹腔内消化系を摘出する。つまり、消化管は食道から肛門であるので、1)腸管を切らないように配慮しながら、肛門周囲の体壁を円形に切り取る。消化管下端が遊離する。2)食道の上部を触診し確認後、切り離すし、全体を摘出する。など、出血するのでその部位に止血綿を押しあてる。
  8. 食道から肛門まで一本の消化管として直線的に配置してみる(観察する)。終了後、腹腔内部に収まっていた状況となるように、再度、立体的に配置してみる。
  9. 消化系附属器(肝臓と胆嚢)や脾臓をそれぞれ摘出し、名称等を確認する(出血するので必要に応じ水洗する)。出血の後は退色することを確認する。
  10. 切り離した食道の管口から水道水などをスポイトで消化管内に注入してみる(消化管内容物があるときには、注入水を利用し排出する)。腸上部(胃の下部)を摘んで閉管状態にして、再度、注水し、胃の膨隆状態・形・弾力を確認する。
  11. 終了後、腹腔体壁に位置した食道内腔から口腔に向かって指を入れてみる(咽頭歯がある魚種では注意する)。切り離した食道管腔にも、可能な場合には、指を差し入れてみる。
  12. 切り離した消化管を、食道前端から長軸方向に切り進む。消化管腔の内壁が露出したら観察・触診する。内壁を水洗すると白く変性する。粘膜が剥がれやすくなる。
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  13. 補足:魚類の消化系(見慣れないもの・聞き慣れないもの:魚種で異なる)
     1)幽門垂(ユウモンスイ):胃と腸の境界部にある。
     2)肝膵臓:肝臓組織と膵組織が混在する
     3)膵臓(幽門垂の周囲に散在する。又は肝膵臓として散在する
     4)消化系の派生器官:鰾、有管鰾(食道に連結開口している)。
     5)無胃魚(コイ・金魚など)

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<休憩しましょう・休みながら考えましょう>
周囲の人も状況も確認する。


3. 口腔/鰓腔部

仮死状態で「心臓の拍動」を観察する場合は、次項の「4. 囲心腔部」から進める。

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(画像をクリック: Fig24   中 Fig25  右 Fig26 )
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(画像をクリック: 左 Fig27   右 Fig28 )
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  1. Fig25:鰓蓋(サイガイ/えらぶた)を持ち上げ、鰓の状態を確認した後、矢印(5)(鰓蓋後縁の上下基点を結ぶ線)で鰓蓋を切り取り、鰓腔を露出させる。
  2. 後に、鰓弓(サイキュウ)の上端・下端を切り離すので、その前に露出した鰓の基本構造(鰓弁や鰓耙の様態)ピンセットなどを利用し簡単に観察する。
  3. Fig26口から口腔左側にハサミを差し込み、(6)水平線に沿って切り進み、上顎部と下顎部を切り離す。体側右側も同様に切る。
  4. 鰓全体が露出するので、その立体構造を口側から覗き、観察記録する。
  5. 鰓弓の上下端にハサミを丁寧に入れ、4対の鰓弓を一枚ずつ切り離す。又は4対の鰓弓骨をそのままの構造(カゴ状構造)を維持したまま、鰓腔の上下基部から切り離し、鰓の全体の立体構造を観察する。
  6. 鰓弓が鰓弁や鰓耙から成ることを再確認する。鰓弓の側後部から派生する多数の鰓弁は、派生方向が交互に異なる。よって2縦列に見えることも確認する。
  7. 必要に応じて、鰓弓・鰓弁を切り取り、スライドガラス上(ウェットマウント法)で顕微鏡を用い観察する(血管の様子や血球細胞)。この場合、メダカや稚魚などの鰓弓観察が好ましい。
  8. 口腔内部(歯・舌など)や咽頭歯を確認する。咽頭口-食道に指を入れてみる(食道-胃でも良い。

4. 囲心腔部

以下の操作に従って「心臓露出」を行なうが、思うように進められない時には、その途中から<口腔・鰓腔部>に移り、終了後、再度、「囲心腔部:心臓」を進める。

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(画像をクリック: 左 Fig29   中 Fig30   右 Fig31 )
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  1. Fig30露出した腹腔前下部の体壁断面(皮膚と筋肉の層)の中へハサミの先端を差し込み、囲心腔の下部正中線(7)を切る。この操作を繰り返し進めると心臓を納めた囲心腔の一部/膜が露出する。
  2. ハサミの先端で心臓を傷つけないように配慮しつつ、更に切り進め、囲心腔が充分に露出するように切開する。
  3. 同時に、側面の体壁を注意深く少しずつ切除する。心臓の各部(心房・心室・動脈球)が完全に観察できる段階まで操作を進める。出血したら慌てず紙タオルで拭き取る。
  4. 心房・心室・動脈球(先端の白い小さな膨らみ)の色・形を確認の後、動脈球の前部と心房の後部にハサミを入れ心臓を摘出し、(水洗後)、所見を確認する。更にメスやハサミで心臓の縦断面を作成し、内部構造を観察する。
  5. 補足1:麻酔処理により準備した実験魚では心臓の拍動も観察できる。摘出後でも拍動する場合があるので確認する。
  6. 補足2:血管系の観察には稚魚を用いたライブ観察も有効(ウェットマウント法、またはビニール袋に鎮静個体を少量の飼育水と一緒に封入し、実体顕微鏡や低倍率正立顕微鏡で行う)。血液塗抹標本の作製も有意義である。

5. 頭蓋部/脳函と眼球

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(画像をクリック: 左 Fig32   中 Fig33   右 Fig34 )
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(画像をクリック: 左 Fig35   右 Fig36 )
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  1. 中枢神経とは脳(brain)と脊髄(spinal cord)であり、前者は神経頭蓋(脳函の中)に、後者は脊椎の背側に位置する神経弓門の中に収まっている。脳を観察するためには頭蓋(骨)の背面(頭上部)をハサミで切り取るが、この時、紙タオルで頭部を確実に保持する。ハサミを差し込む時には、その刃先の延長上に決して手指があってはならない。安全は全てに優先するFig33, 34)。用いるハサミは先端が尖ったブレードが丈夫な料理用ハサミでも良い。
  2. 補足:脳神経が崩れやすい状態(あまり新鮮でない)時には、熱湯を少しずつ注ぎ加温固定する。または70%エタノールを滴下し固定/固化させると容易に摘出ができる。初学者の場合は、下記の「眼球部の操作」が終了した後に、熱湯の中に頭部を浸し、完全に加熱固定してから行なうと容易に操作ができる。
  3. はじめに、頭部を(8)線で切り離す。
  4. Fig35:後頭部の皮膚または頭部切断面の体壁にハサミを差し込み、皮膚を取り除き、頭骨を露出させ、更に矢印(9)方向にハサミを入れ、頭蓋骨上部を水平面で切り落とす。具体的には、頭部切断面の(9)の位置からハサミをすこし開いた状態で水平に刺し入れると頭蓋に突き当たる。保持する手指の位置に注意し、そこで、力を入れて頭蓋上部を切る。この操作を何度か行うと頭蓋腔の内部(空所)を感じる。つまり内部に達したことが分かる(内部には脳があるのでハサミの進入角度を下に向けてはいけない)。切断した頭蓋骨の上部を持ち上げながら切り取る。結果として頭蓋腔内の脳の一部が露出するはず。
  5. 更に頭骨の周囲を切り開き、脳全体が露出するように丁寧に周囲を切り進める。完全に露出した脳を頭蓋腔からピンセット(または先が鋭利でない串)などで軽く持ち上げてみる。その構造を背面から観察し部位名称を確認する。
  6. 下記<F基本操作5:眼球>が終了した後で、脳全体を摘出し所見をまとめる。
  7. 更に、頭部切断面(8)に露出する椎骨の上部に白く見える脊髄断面に細い針金などを差し込み、脳函の内部まで到達することを確認する。

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6. 眼球

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(画像をクリック: Fig37 )
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  1. Fig37:頭部側面の眼球周囲に鋭利なハサミを差し込み、丁寧に周囲を切る。眼球全体を完全に露出させる。
  2. 眼球に接合している外眼筋(乳白色?)を確認後、丁寧にピンセットなどで取り除き、脳と連結している視神経(白色?)を露出させ確認する。その後、視神経を切り離し眼球を摘出する。筋肉と神経の違いが不明瞭な時はエタノールを滴下してみる。
  3. 眼球前面の角膜を切り取る。
  4. 更に眼球内部を視神経方向に切り進め、開き、その構造を確認する。
  5. レンズ等も摘出する(レンズとしての機能も確認:印刷文字の上にレンズを置いて見る)。眼球内面の黒色の膜が網膜であり、黒色は色素上皮細胞のメラニン色素に由来する。

7. 腎臓・脊椎/椎骨・脊髄

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(画像をクリック: 左 Fig38   中 Fig39   右 Fig40 ) 
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  1. Fig39:腎臓は腹腔背部(脊椎骨直下)の前後に細長く張り付いている赤黒い臓器である。まず、腹腔との境界にある腹膜をピンセットなどで持ち上げ、丁寧に取り除く。腎臓を露出させる。なるべく出血させないように丁寧に行なう。
  2. 体右側の腹部体壁も切り取り、腎臓だけが露出した腹腔背面を成形する。
  3. 腎臓前部の左右端を確認後、腎臓そのものには触れないように注意しながらメスを軽く差し込み、前後に少しずつ切れ目を入れる(メスは小形カッターの替え刃でも良い)。これにより腎臓背面が自然と露出してくるはず。繰り返し操作を進め腎臓全体を完全に露出させる。腎臓の後端は腹腔より後部まで伸びていることに配慮する。
  4. 腹部(胴部)前部の脊椎骨を摘出し、その形態を確認する。
  5. 肛門部で魚体を横断切除し、脊椎管内にある脊髄を摘出(引き出す)する。
  6. その他:他人の状況を確認し、質問する。ともかく疑問は大切にすること。

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C 実験魚に対する配慮

  1. 昔から、動物実験を行うにあたっては、例えば「動物実験の自戒」として「誠心感謝の意を以て・・自ら戒むること肝要なり」(動物実験解剖の指針(1964)岡村周諦、風間書房)となっている。「感謝の自戒」である。
  2. つまり、実験魚を解剖に供した君には「何を学び、何を考え、今後、どのようなことを考えたいか、どのように発展させたいか」を積極的に考えてほしいと思う。実験ノートに上記の項目を丁寧にまとめて下さい(感謝の自戒)。

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    (画像をクリック:  Fig41 ) 
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D. 実験前と後の確認(各部の主要名称

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(画像をクリック:  Fig42 ) 
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(画像をクリック: 左 Fig43   中 Fig44   右 Fig45 ) 
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(画像をクリック: 左 Fig46   中 Fig47   右 Fig48) 
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(画像をクリック: 左 Fig49   中 Fig50   右 Fig51) 
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(画像をクリック: 左 Fig52   中 Fig53   右 Fig54) 
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<E. 用語>

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(画像をクリック: 左 Fig55   中 Fig56   右 Fig57) 
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(画像をクリック: 左 Fig58   中 Fig59   右 Fig60) 
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外部観察
全長(total length)、標準体長(standard length)、吻長(snout length )頭長(head length)、上顎(upper jaw)、下顎(lower jaw)、鼻孔(nostril)、眼(eye)、頬(cheek)、肛門(anus)、背鰭(dorsal fin)、腹鰭(pelvic/ventral fin)、胸鰭(pectoral fin)、尻鰭(anal fin)、尾鰭(caudal fin)、側線(lateral line)、尾柄(caudal peduncle)

腹腔部
消化管(alimentary canal) 、消化腺(digestive gland)、食道(esophagus),胃(stomach),幽門垂(pyloric caecum)、膵臓(pancreas), 腸(intestine)、直腸(rectum)、肛門(anus)、鰾(air bladder)、肝臓(liver)、胆のう(gall bladder)、脾臓 (spleen),腎臓 (kidney)、輸尿管(ureter)、膀胱(urinary bladder)、生殖巣 (gonad)

囲心腔部
循環器(circulatory organ) 、心臓(heart)、静脈洞 (sinus venosus/venous sinus)、心房(artium)、心室(ventricle)、動脈球 (bulbus arteriosus/arterial bulb)、動脈系(arterial system)、静脈系(venous system)、毛細血管(capillary vessel)、背大動脈(dorsal aorta)、

口腔
口腔(oral cavity)、鰓(gill)、鰓蓋(operculum)、鰓腔(gill cavity)、鰓弁(gill filament)、咽頭(pharynx),入鰓動脈(afferent branchial artery)、出鰓動脈(efferent branchial artery)、

頭部
脳(brain)、脊髄(spinal cord)、脳神経(cranial nerve)、脊髄神経(spinal nerve)、末梢神経系(peripheral nerve system)、自律神経系(autonomic nerve system)、嗅球(olfactory bulb)、嗅葉(olfactory lobe)、視葉(optic lobe)、小脳(cerebellum)、延髄(medulla oblongata)、視床下部 (hypothalamus)、終脳(telencephalon)、間脳(diencephalon)、視蓋(optic tectum)、小脳(cerebellum)、延髄(medulla oblongata)、嗅覚器(olfactory organ)、神経管(neural tube)、味覚器(gustatory organ)、

眼球
視覚器(optic organ)、色素上皮層(pigment epithelium),

その他の部位
脊髄(spinal cord)、椎体(centrum)、背鰭条(dorsal fin ray)、脊椎骨(vertebra

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