国立大学法人 東京海洋大学

東北マリンサイエンス拠点形成事業 課題2 テーマ7

モニタリング


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内部波伝搬による乱流混合


Fig. 1 観測海域。(c)内の赤青線がYODA Profiler観測ラインを示す。

Fig .2 (a)潮位、YODA Profilerにより観測された(b, c)水温と(d, e)濁度、及び曳航型ADCPによる(f, g)東西流速観測結果。 (A)及び(B)は曳航観測の観測期間を示す。

YODA Profilerの観測結果から推定した乱流エネルギー散逸率εは、内部波の境界層と海底面が接する地点、及び内部波境界面内で高い値を示した (Fig.3ab, ε = 10-7 ~ 10-6 Wkg-1)。

Fig. 3 YODA Profilerにより推定された (a, b) 乱流エネルギー散逸率と(c, d) 渦拡散係数。(A)及び(B)はFig.2に準拠する。

湾内における微細構造観測装置TurboMAP-Lを用いた24時間観測の結果からも、同様に、冷水塊を伴う内部波伝搬時にε= 10-7 Wkg-1 程度の強い乱流を観測した (Fig.4b 7:00前後)。

Fig. 4 TurboMAP観測結果。(a)水温、(b)乱流エネルギー散逸率、 (c)蛍光光度と (d)濁度。

高解像度サーミスターチェーンにより定点において観測された水温データは、高周期で内部波境界面が振動する様子や、湾に伝搬する内部波の先端で発生する渦上の構造を示した(Fig.5)。内部波境界面の高周期の振動は、境界面の浮力振動数の周期に近いことからKelvin-Helmholtz Instability を示していると考えられる。

Fig. 5 高解像度サーミスターチェーンによる定点観測結果。(a)内部波伝搬時の水温鉛直時系列分布、(b)内部波境界面の振動のスペクトル、(c, d)内部波先端部分の水温時系列分布の拡大図。

これらの観測の結果から、内部波は大槌湾の浅海域への伝搬時にBreaking (砕波)し、この時に強い乱流を発生させていると考えられる。推定された渦拡散係数は内部波内において10-5 ~ 10-4 m2s-1 程度の強い値を示し、湾内の海水の鉛直的な混合や、湾内外の水の混合に強く寄与していることが示唆された。(文章・図:増永)

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