2007年以来,5年ぶりの東京・伊豆諸島の港湾調査に出かける.これは五カ年計画策定ごとに視察する
ため.前回の視察絡みは,本コーナー『伊豆諸島編』で紹介されています.
今回は竹芝桟橋から出航の,22時過ぎの夜行船に乗る.出航前の東京湾の夜景です.左端に東京空木.





船は三宅島に5時に到着し,6時に第一の目的地,御蔵島に接岸した.これは御蔵島で唯一の港,
御蔵島港.
御蔵島は1990年代から『イルカの島』でダイバーや観光客を集めている.海に屹立した御山の標高は
800mちょっとだが,海底から換算すると,2,300mにも及ぶ切り立った山であるという,
今年度,左側の突堤の護岸整備が進行中.





御蔵島の中心部.このわずかな空間に,御蔵島村300人強の人口が集中している.狭い道路と,急峻な
坂道からなる村である.イルカ効果のためか,最近は若い人の移住も多く,人口は増加傾向とか.





小学校・中学校・村役場・ヘリポートがこの通り隣接立地しています.小中学校施設は新しく,また,
ヘリポートの下は,島特産の柘植(つげ)加工場や,ミネラルウォーター工場になっている.





御蔵島は水源豊富なんだそうで,ヘリポートの下で作っている,この源水ペットボトルが名産品の一つ.
ちなみに,利島と三宅島は水源不足で,一時は御蔵島からパイプラインで近くの三宅島に送水する案も
あったとか.





『いるかいないか』. いいネーミングですね.観光センターで,兵藤も購入しました.54頭の個体識別
されたイルカのプロフィールや,イルカにまつわる情報が綺麗な写真で紹介されている.四十数分の
DVDも癒されます!
御蔵島付近には,約160頭のイルカが生息しているとか.島から流れる水と,黒潮による餌場がイルカ
を引きつけるらしい.





さて,御蔵島滞在は5時間で,ヘリコプターで10分.三宅島に渡る.
これは東部の三池港岸壁の釣り人達.





これは西部の伊ヶ谷漁港でケーソン設置絡みの工事をする船.ケーソンを支えるブロックを沈めている.
漁港とはいえ,この港にも旅客船(本船)が接岸することもある.三宅島は『一島三港』である.





三宅島の阿古漁港(三港の一つ)近くで,消波ブロックの『ドロス』を製作中だった. かなりシッカリとした
配筋ですね.この型にセメントを流し込む.





これは御蔵島で見かけた最新式のブロックで,『テトラ・ネオ』との名称とか.かみ合わせが良さそうだ.






三宅島には初めて来たが,ニュースで何度も災害の様子を見ていた.実際に,間近にその爪痕を見ると
唖然とする.そもそも,三宅島では近年,約20年毎に火山災害が発生している.2000年の,全島避難と
なった雄山爆発+ガス発生,1983年の溶岩流出による阿古地区集落壊滅(約400戸),1967年の東部
地区の溶岩流出... この地図を見ても,流れ出た溶岩が島の形状を絶えず変化させてきたことが分かる.





2000年の火山ガスにより死滅した樹木は,まだこのように島内の至る処に残っている.12年が経過し,
だいぶ新しい緑が芽生えてきている.しかし,もう20年の半分以上が経過してしまった.
溶岩流出と異なり,2000年噴火はガス放出だったので,20年周期が崩れるのでは という希望的観測も
あるようだ.





火星の写真...ではない.島内の環状林道(標高300mくらいか?)付近にある展望台の風景.見渡す限り,
茶・黒の溶岩・溶岩・溶岩 だ.草木もないが,1983年以前は,村営牧場もあり,のどかに緑が広がって
いたとか.ここからの動画はこちら.





同じ場所からの御蔵島の遠景.すぐ近くに位置していることが分かる.





三宅島特産品,『牛乳せんべい』を作っている,岡太楼本舗のせんべい工場.丑年ごとに一頭ずつ,この
モニュメントを増やしていくのだそうだ.





牛乳せんべいの製作工場.作りたての牛乳せんべいも食べさせてくれる.アツアツなので,柔らかく,
販売製品とは異なった食感を楽しめる. 行くべし!





空港近くの看板.この高濃度指定は未だ解除されていないが,ガス量が少ない普段の
立ち入りには制約はない.しかし,一時期は緊張を強いられる島内生活であったこと
を伺わせる看板である.
右奥に飛行機が見えている.そう,13:20発のデ・ハビランド・カナダ機(DHC-8,デハビラント社は今は,
ボンバルディア・エアロスペース社に買収されている)で羽田に帰る前の写真です.





この図は,過去3年度の,三宅空港−羽田空港(ANAによる毎日1便運航)の就航率グラフ.火山ガスが
発着飛行経路に少しでも差し掛かると欠航となる.特に1月などは,月に1度しか飛ばなかったこともある
のだ.ちなみに,平成23年度の年間就航率はわずか34%だ.
この日も,飛べば,14:05に羽田着,欠航の場合は,14時過ぎの船便で,竹芝到着は夜の八時半過ぎ
である.前日は欠航で,ハラハラしたが,北東の風が強めに吹いていたのでセーフ.席は満席.





席数50の,いわゆるregional jet(ターボプロップ機だが)で多用されている機材.
このANA便は,来年度には撤退するらしい.代替のフライトについては,現在,概ね目処がついているとか.



今回も,2007年に続いて島の厳しい生活環境を見聞することになった.しかし,釣りやダイビングなどの
観光客はコンスタントに来島しているようなので,交通施設基盤整備を絶やすことなく,島民のサポートが
不可欠ですね.