JICA仕事(カブール新都市開発)のお手伝いで,未だにテロが横行し,日本人旅行客には
渡航禁止令が出ているアフガニスタンに行ってきた.デリー経由で,いよいよ
カブール空港に到着するところ.現地では,どちらかとうと,『カブール』ではなく,
『カーーブール』と発音するが,どっちでも通じるようだ.
上空から見るカブールは正にdesertの街.荒涼とした景色が眼下に迫る.
その動画はこちら.
さて,出発前に一応,日本でGoogle Earthでカブール市内をチェックしていた.
しかし,この図を見て,『廃墟のような四角い建物群は何?』と疑問を感じる.
答えは,この通り,市内中心部に位置する小高い山(中心部との高低差200m程度?
ちなみにカブール市は標高1800mの高地都市だ)の斜面に張り付いた住居群でした.
狭い道でしかアクセスできないような場所に,石造りの家がベタベタと頂上に向かって
配置された感じ.不法住宅らしいが,いったいどんな生活が成り立つのか,不思議だ.
市内中心部にある小高いフタこぶ山の一つ,マスマイ山に登る(車で十数分).日本の
援助でテレビ塔が作られているが,そこから市内中心部を眺めることができる.
やはり,上から見ても,山肌にへばりつく家々の姿は迫力がある.
これはマスマイ山北部の中心市街地を含んだパノラマ写真.この日は風が強く,かすんでいるのは砂塵のため.今の季節は殆ど雨が降らず,厳しい日差しに極度の乾燥という
気候.冬は雪も積もり,寒さが骨身にしみるそうだ.マスマイ山南東部の眺めの動画はこちら.
カブール市北西部にもこのような『山肌張り付き住宅』が広がる.この地域は最近,
『開発』されたそうで,比較的広めの家+アルミサッシ などが目立ちますね.
でもやっぱりinformalだそうです...
カブール市近郊に視察で出かける.

さて,アフガニスタンはまだ治安は悪く,この出張の直前にも,市内のインド大使館が
自爆テロの攻撃に遭い,大使館員数名を含む50名以上の犠牲者を出している.
今回の滞在も,@ホテルと事務所以外は一切外出禁止,A視察時は最新の危険情報を
考慮し,指定ルート以外の走行禁止,B移動は防弾車使用,C毎晩レシーバーを用いた
個々人の安否確認 などの安全対策が施される.
実は,この近郊視察時も,例によってGPSで位置取得をしたが.諸般の事情で公開しない.
これは郊外で砂嵐のような強風に出会ったところ.
NATO軍だろうか.幹線道路を走る軍関係車両も少なくない.まだ戦場状態の地域も
多いのだ.特にカブール郊外南部地域では,タリバーン勢力も現存し,現地新聞にも犠牲者の
ニュースが絶えない.ちなみに,全てがタリバーンという訳ではないが,全国で,
自爆テロは週1回程度起きている.雪のなくなる春先〜秋は多いそうだ.
その他,外国人の誘拐も後を絶たないらしい.
沿道の白い石は,実は反対側は赤く塗られている紅白の石だ.これは,道路の向こう側
が地雷埋設地帯であることを示している.市内も片足をなくした人が多く,まだまだ
戦乱の生々しさを払拭できないことが分かる.
郊外の風景.子供が農作業の手伝いをしている.先月撮影したベトナム郊外の写真
比較すれば,その自然条件の違いは大きい.しかしカブールから数十キロ以上の北部は
水や緑が豊かな豊穣な農地だそうだ.気温差が大きく,日射量も多いので,果物を始め,
ナッツ類などが世界的な特産品だとか.
農村の生活を支える井戸.奥に倉庫のような家が見えているが,造りは,地元で作られる
煉瓦を積み重ね,外壁として土を塗り,天井部は梁となる木を通し,その上に藁を
かぶせているようだ(見た感じです).
市内の物流風景.人手に頼ったモノ運びが多い.バイク,自転車よりは,とにかく
歩行者が目立つ街である.典型的な市街地の様子の動画はこちら.
市内は未舗装道路が多く,ちょっと裏道に入るとこんな感じ.生活道路で遊ぶ子供たち,
というスナップだ.ちなみに,roundaboutも割と多い.その通過時の動画はこちら.
市内の南部にある,もとの宮殿.内戦時に銃弾,ロケット砲などを打ち込まれ,完全に瓦解
し,廃墟と化した.これに限らず,崩壊した建物,弾痕の消えない壁など,殺伐とした
モニュメントに事欠かない街である.感覚としては,市内を移動していると,数十メートル
に一人はマシンガンやライフルを持った警備兵を見かける感じ.
とにかく,一刻も早い平和,そして "No Weapon" の世界を取り戻してほしい.
このような環境下で業務を遂行しているJICAの方々や,調査団を始めとする関係者皆さんの
無事と良き成果を祈る次第です.


なお,これも恒例で,アフガニスタン関連書籍を紹介したい.

1) 「君のためなら千回でも」 カーレド・ホッセイニ著,早川文庫
 1970年代後半のソ連侵攻まで裕福で平和な暮らしをしていた著者は,アメリカに移住
 するが,その頃から現代に至るアフガン情勢の変遷を交えた小説.2003年にアメリカで
 ベストセラーになった.映画化もされており,運が良ければ近くの映画館で見ることが
 できる.しかし近々,映画のDVDが発売されるようだ.必読!必見!
2) 「アフガニスタンの診療所から」 中村哲著,ちくま文庫
 アフガニスタンで医師,そして井戸掘りなどで活躍する中村氏の著作.大国による
 援助とは違う視点から,この国の様子を活写している.中村氏の著作は多く,これ以外も
 検索すれば興味深い書籍が入手可能だ.
これはおまけ.帰りのTransitで,3年半ぶりにドバイで出国する.今建設中の高さ
世界一のビル,Burj Dubaiだ.すでに660m以上に達しているそうだ.
丁度,東京タワーの2倍ですか...
細長い形状に,巨大ビルというよりは,高いタワー という実感.
それにしても,さっきまでいたアフガンとの格差に唖然.
せっかくなので,昨年末に台北に行ったときに撮影した高層ビル,Taipei-101を紹介.
Burj Dubaiができるまで世界第1位だった(509m).
トヨタの丸い広告が四方に掲げられているが,兵藤は通天閣を連想しました... 失礼.