ブルーカーボンについて

東京海洋大学 山本和美
はじめに

日本には四季があり、冬は寒く夏は暑いことは誰もが理解している事だが、
近年は寒暖差が激しくなっており、想定外の異常気象見舞われるケースが目立っている。
この異常気象は、温暖化が与える影響が関係していると言われている。
温暖化が進むと、南太平洋にある島が水没の危機に直面するらしいと知人に話したところ、今まで地球は周期的にそういうことが繰り返されてきたのだから、ここで騒いだところで仕方ない。とのクールな意見が返ってきた。
「そういうこと」があった。氷河がたくさんあり、寒冷化していた氷期と、氷期と氷期の間の比較的温暖な間氷期という気候変動を繰り返していることは事実であり
46億年の地球の歴史の中で、気候変動とともに絶滅と進化を繰り返し、地球も環境も変化して現在に至っている。
とは言え、その地球のサイクルが、人類によって乱されてきており、これをクールに看過する訳には行かない。

産業革命以降の急速な文明発展と人口増加は自然環境の破壊と資源の消費によって支えられてきたが、このままでは海面上昇、干ばつによる食料不足、生態系の崩壊などにより人類が住めなくなってしまう事が危惧される。ところが地球が急速に温暖化していることは以前より専門家の間で問題視されているが、人間は産業発展を優先的に考えてきているため、温暖化対策に関してはなかなか共通認識で進められていない。少しでも「温暖化を食い止める」「温暖化を遅らせる」努力を怠るべきではなく、私なりの温暖化対策を考えてみたい。

温暖化とは

温暖化は気候変動のひとつで、地球の表面の大気や海洋の温度が上昇する現象である。
太陽エネルギーの変化など地球を取り巻く環境要因と、温室効果ガスなどの人為的要因などによるものが原因と考えられている。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では 人為的に排出されている温室効果ガスの種類の中では二酸化炭素の量が最も多く、その最近の排出量は、260億トン/年と言われている。その二酸化炭素を吸収・削減するための対策がいろいろと研究・調査・実装されている。
私は、日本は海に囲まれた海洋国家であり、個人的にもマリンスポーツが好きなため、海に関連した「ブルーカーボン」や「ブルーリソース」などをきちんと理解し、これからの環境に適応し、温暖化対策を奨励することはできないだろうかと考える。
それには、エネルギーを化石燃料から自然エネルギーなどに移行する、いわゆる再生可能エネルギーに転換することや、森林や海の自然の力を借りてのグリーンカーボン・ブルーカーボンなどがある。

ブルーカーボンとは

大気から海中で海洋生物によって吸収・貯留される炭素をブルーカーボンと呼ぶが、2009年国連環境計画(UNEP)の報告書が公開され、そこにブルーカーボンという言葉が初めて表記された新しい言葉である。

この報告書には海洋生物が陸上生物に勝るとも劣らない重要な二酸化炭素の吸収源であると示されており、海洋から発生する二酸化炭素の量は、3226億トン/年、海面から吸収される二酸化炭素の量は3300億トン/年、差し引き74億トン/年二酸化炭素を吸収している(IPCC 2001年のデータ)。
ブルーカーボンは海中のグリーカーボンであり、グリーンカーボンとは光合成などの作用によって植物が大気から二酸化炭素を吸収し、生物の体内や土壌に蓄積させた炭素のことと報告書に記載されている。
海洋植物も陸上植物のように、光合成をする。
大気から海中へ二酸化炭素が吸収され、海中から海洋生物の体内に有機酸素として炭素が吸収される過程と、このとりこまれた有機炭素のうち、一部が何十年や数百年などと、果てしない時間をかけて海底や海中に保存、いわゆる貯留されることをいう。
簡単にいうと、大気から海中で海洋生物によって吸収・貯留される炭素をブルーカーボンという。
また、森林よりも海の方が二酸化炭素を多く吸収していた。
2000年〜2005年の5年間の平均で、人類の活動による二酸化炭酸素の57%は大気中に放出されたが12.5%は森林に吸収され、残りの30.5%は、なんと海に吸収されていた。
地球は水の惑星といわれているのだから、海に吸収される数字の方が大きいことは当然の結果かもしれない。

ブルーカーボンの可能性

海が二酸化炭素を吸収するということを利用して、いろいろと研究が進められている。

アマモなどが生育している砂泥性の海草藻場が二酸化炭素の効果的な吸収・貯留に適しており、また沿岸浅瀬域の再生に効果があることも調査研究で明らかになってきている。
しかしながら、現在日本全国でこのような研究が勢力的に進められているが周知されることが少なく、また検証方法や同一の基準のようなものが未だに設定できておらず、全体的な連携や社会的受容性の確保も必要と思われる。環境の分野での価値の創造をすべきである。このブルーカーボン生態系を管理・活用しブルーインフラとしての市場を確立させて、資金を産むことが可能になれば、海に関わる産業と結びつけられ、海岸沿岸の再生や保護、漁協との協力や観光、強いては生活している地域全体などにもより良い影響を提供できるのではないか。

みんなにできるブルーカーボンってなんだろうか

ブルーリソース

リソースという言葉は資源全般のことで、ブルーリソースというのであるから海洋関連における資源のことで、たとえば洋上臨海部での風力発電、護岸・防波堤を活用した波力発電、海洋バイオマスエネルギー、海水利用ヒートポンプによる熱エネルギーなどの、海洋再生エネルギーの利用である。船舶への電力供給や臨海部工業団地などにおける二酸化炭素排出削減などの技術である。
(海藻や貝類の食用利用、地産地消もあり?)

EUなどは、総電力の一部を風力発電で賄う計画もある。一般的に洋上の方が陸部よりも平均風速が高く、より多くの発電量がえられるとのこと。日本の沿岸は深いためEU沿岸のように容易には設置できないが、日本の技術でなんとか実装してほしい。
乱暴かもしれないが、海のそばにある原子力発電所(稼働していないのだが)に風力風車を設置しいてもよいのではないのかと思ったりする。

太陽光パネルなど、港湾の施設等の壁面を利用して設置し蓄電し、送電するシステムをつくればよいのではないか。
そして停泊中の船舶のエンジンを使用せず、陸上より電力を供給するという陸電も併用していけば、船舶のエンジンから排出される二酸化炭素も減少させることができ、これも二酸化炭素削減技術である。ブルーリソースの一つである。
また、船と陸との間に電力融通するシステムにより、災害時に陸上に電力供給を行うことも可能である。
陸電は、海と港の環境を守りながら、災害時にも対応できるというのは素敵なシステムではないだろうか。また、海水温は、気温などに比べて2ヶ月くらい遅れて変化する。冬は海水から熱をもらい、夏は海水に熱を引き受けてもらうという海水の特徴を生かした海水ヒートポンプも、二酸化炭素削減技術である。これもブルーリソースの一つとなる。

いずれも物理的には可能な技術と考えられるが、経済合理性がネックとなり実用化には至っていない。

海からの環境改善とこれから

高度経済成長期に、いわゆるグレーインフラを整えてきたため、昨今再整備が必要となってきている。
そこで、このグレーインフラを整備する際にブルーカーボン生態系を考慮し、更にブルーリソースを駆使して、より良い海を取りまく環境の再構築をすべきではないかと強く思う。

そのためには…何が必要なのか?

海洋に関しての持続可能な取り組み。
世界的にも取り上げられている問題でありながら、何故本腰を入れた取り組みにならないのか?経済合理性が問題なのであれば世界的に採用すればコストの低減が期待できるはず。

きちんと5年、10年、20年というスパンでの中期・長期計画を掲げ、研究者と企業が両輪となって進めていくべきだと思う。
そしてそこに自治体やNPOなどが参加していく。本当の意味の産・学・官・民連携。
消費税を10%にするなら、その1%を環境改善に使えるようにするとか、なんなら環境税を徴収しても構わないのでは?いや、消費税の値上げが反対か賛成かという単純な議論でなく、「そもそも何故消費税の値上げが必要なのか」という実情を国民に理解させる必要があると思う。世界における消費税率は10〜25%が当たり前であり、有権者の支持率を意識した政策ではなく、将来に望みが持てる施策を打ち出して頂けることを望む。
子供の学費を無料化する事も必要かと思うが、「子供たちに何を教えるか」が一番大切なことだと思う。

地球温暖化の事やわたし達に出来る事についてアンテナを高くして、これからの子どもたちに地球温暖化の原因となっている、CO2を含む温室効果ガスの排出を抑えなければならない理由などを話して、日々大好きな海でのビーチクリーン活動に参加できたらと思う。

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