単語のアクセント ・文の中で弱く短く読まれる単語 ・聞き取れないのはなぜ?
単語のアクセント
まず日本語の「カナダ」と英語の Canada を聞き比べてみましょう。
日本語のほうは、「カ」も「ナ」も「ダ」もだいたい同じ強さと長さで読まれているのに対して、英語の Canadaは、アクセントのある最初の音節 (CAN が一番強く、長く感じられ、後に続く部分は、これに比べてずっと弱く、短く発音されていますね。これを視覚的に表すと、こんな感じです。
カ-ナ-ダ CAN-a-da
日本語は、このようにどの音節も比較的同じような長さと強さで発音するのに対して、英語はアクセントのある音節は強く、長く、はっきりと、逆に無い音節は、弱く、短く、あいまいに発音するという特徴を持っています。
そこで我々が英語を発音すると、ついついめりはりのない発音になってしまいます。逆に英語話者が日本語を発音すると、「わーたしーのなーまえーは、John です。」のように、どうにも落ち着きのないものになるのです。
そこでまずは、英語を発音するときに、以下のルールを頭に叩き込んで実践してみましょう。
アクセントのある音節: 強く、長く、はっきりと
アクセントのない音節: 弱く、短く、あいまいに
では次の単語を聞いてください。
一番強く聞こえたのは、どこで、次に強く聞こえたのは、どの音節でしたか?
NAV-i-GA-tion
という印象を受けたはずです。何度でも聞いてみましょう。
NAVの部分に、「第2アクセント」、の部分に、「第1アクセント」があるといいます。
次に自分で次の日本語に対応する英語を発音してから、正解を聞いてみてください。
バニラ 、 ゴリラ 、 カラチ(パキスタンの港) 正解はこちら
このように正しいアクセントの位置がわからないと、多くの場合英語話者に通じにくくなります。単語を見たら、強いアクセントのある位置を確認して、その母音を正しく発音できるようにしてください。積荷がバニラやゴリラということはないでしょうが、特に地名の場合など、アクセントの位置に注意しないと、正しく聞き取ってもらえないおそれがあります。
もちろんいざとなれば、My last port of call was Karachi, Kilo, Alpha, Romeo, Alpha, Charlie, Hotel, India. と先手を打って綴ってしまうことも可能です。読み方のわからない地名や、船名を伝える際には、有効な手段です。
それでは以下の単語で練習してみましょう。
文の中で弱く短く読まれる単語
まずは次の文を聞き取ってみてください。
英語では普通の速度の会話では、以下にあげるような単語は、弱く、短く、あいまいに発音されます。どれも一音節の短い単語であるところに注意してください。これらの単語は、名詞(davit, hull, draft など)、形容詞(beautiful, deep など)、動詞 (lower, raise など)、副詞(slowly, rapidly など)のようにはっきりとした内容を持つ単語(内容語)と異なり、主に文の要素の間の関係を示したり、前の単語を受けたりするもので、機能語と呼ばれています。
前置詞: | at, in, of, from, to, for など。 |
接続詞: | and, but, or, that など。 |
冠詞: | a, an, the |
代名詞、関係代名詞: | it, me, she, he, his, him, her, who, that など。 特に he, his, him, her などでは h が落ちることがあるので注意。 |
助動詞: | will, can, should, could, wouldなど。 I'll, I'd は弱い発音。 現在完了を作るhave, has, had などは、I've, he's, she'd となる。 |
be 動詞: | I'm, he's, she's, we're などは弱い発音。 |
このような機能語は、周りの内容語と文脈から推測がつき、弱く短く発音されても、コミュニケーションに支障がでないからです。実際の音を聞く前に、どんな単語が入るか想像してみてから、実際の音を聞いてみましょう。
Q1 Little did I dream ___ PSC inspector would come.
Q2 Watch out ___ fishing gear.
Q3 ___ altered her course.
では自分で発音するときはどうでしょう。VHFの通信などで誤解を極力さけたい場合には、一語一語はっきりと発音してもかまいません。しかし英語母語話者が相手の会話(検査官やVTSとの交信など)においては、できれば英語らしいリズムで会話したほうが、ことがうまく運びます。なまりが強すぎて何を言っているのかわからない相手と、多少のなまりはあっても、よく理解できる話手と、どちらによい印象をいだくかは、言わなくてもわかるはずです。
また自分でも英語らしいリズムで読めれば、聞き取りも容易になります。まずはこのリズムに慣れるため、強い音節と弱い音節が交互に現れる例を使って練習しましょう。まず耳で聞き、後に続いて発音してみてください。
MAKE a BOARDing SPEED of SIX or SEVen KNOTS.
LET me SHOW you HOW to USE the TOOL.
ReDUCE the ENgine SPEED imMEdiately
The PIPE is LEAKing SUper HEATed STEAM.
とくに最初の例では、or も of も「オ」のように聞こえませんか? of は普通の速度の会話では「オヴ」のように発音されず、「オ」のようになります。注意しましょう。 (実際には「 6,7ノット」のようにあいまいな指定はなされないでしょうが、ここはあくまで練習のためです。)
次に弱い音節がいくつも続く例を練習しましょう。英語は強い音節が、だいたい等しい間隔で現れるように発音されるため、弱い音節が複数続く場合には、それぞれが一段と短く発音される傾向があり、聞き取りに支障が出ることがあります。 再び聞き取りにチャレンジしてみてください
聞き取れないのはなぜ?
「聞き取れない」の原因は大きくわけて2通りあります。まずは知っている単語なのに聞き取れない場合です。
これは多くの場合、第1章で扱った「聞こえなくなる子音」と「つながる音」、それに本章で扱った「弱く短く発音される機能語」が原因です。我々日本人の頭のなかにあるイメージと英語の正しい発音がかけ離れているため、聞き取れないのです。
もうひとつの原因は、「知らないから聞き取れない」です。日本語でも、知らない人名や地名は、よく聞き間違えてしまいますね。このようにたとえ自分の母語であっても、聞き取りの際には、単語の知識を活用しているのです。さらに知らない単語なのですから、あたりまえのようですが、意味がわかるわけはありません。
また弱く短く発音される単語の聞き取りには文法知識も必要になることを指摘しました。このように「聞き取り」とは、文法、語彙、音声の知識を総動員した、総合的な認知活動なのです。「聞き取り」だけを訓練することはできません。
このサイトは海事英語の発音と聞き取りに焦点をあてていますが、文法は海事英語であれ一般の英語であれ、共通です。しっかりと基礎をかためなくてはいけません。単語は、海事英語独特の語彙があります。甲板部・機関部の日常教務に必要な語彙をしっかりと身につけましょう。
知っている単語なのに聞き取れない理由のひとつに、R と L や B と V のように、英語では別の音なのに、我々の耳に同じに聞こえてしまう音の存在があります。これが次の学習課題ですが、その中にも多くの聞き取り問題があります。このセクションで学習した、弱くなる単語に十分注意して、聞き取れなかった場合には、自分の耳にどう聞こえたを、カタカナを使って書いておくようにしましょう。そしてどうして正しい英語にたどり着けなかったのか、そのつど考えてみてください。そうすれば必ず自分の弱点が見えてくるはずです。