江戸前ESD協議会の活動報告-2021年度-

 2021(令和3)年度の私たちの活動は、主に「東京海洋大学学長裁量経費」(代表:川辺みどり先生)を活用して実施しました。新型コロナ感染症の影響によってかなり制限され、当初予定していた企画もいくつかが中止になりました。ここでは、予定していた企画をすべてご紹介します。実施した企画については簡単な説明をしておきますが、さらに詳しい報告については(瓦版などで)機会を改めて紹介したいと考えています。

企画1.品川の漁業を記録する
 東京漁連の芝漁業協同組合長である石橋二郎氏に、2019年12月2日にインタビューを、2020年1月25日に
グループ聞き取りを実施しました。今年度は、さらに東京湾遊漁漁船組合さんなどの協力で東京湾における漁業の写真、とくに古い写真を収集し、できればインタビューもおこないたいという企画をたてました。しかしコロナ禍のために、今年度は中止としました。

企画2.自治体との連携企画
 2021年度は、1)葛西臨海環境教育フォーラムとの協働で、江戸川区や八王子市などの小学校への出前授業、および2)港区での海洋講座の企画を予定しました。1)はコロナ禍で中止となりましたが、2)に関しては「江戸前の海をまるごと見る」という
講演を4回実施しました(↓の写真の左側:2022年3月19日@港区立高輪図書館)。



企画3.大学の授業との連携
 東京海洋大学の学部の授業である沿岸海洋学や海洋学実習、博物館学実習Ⅰ、さらに大学院前期課程を対象にした海洋ESD実習などとの連携を企画しました。しかしコロナ禍で大学の対面授業はほとんど中止あるいは規模縮小となり、実施が困難でした。
 ただし海洋ESD実習については、企画7と協働して今年になって実施しました(↑の写真の右側:2022年1月11日の準備@MSM)。

企画4.MSMバーチャルガイド
 東京海洋大学マリンサイエンスミュージアムとの協働企画で、「おうち博物館を見て、アフターコロナにMSMに行こう」を目標にして、動画の「博物楽譚」を作成し、YouTubeで公開しようという企画です。2020年度には「鯨」と「貝」を第1回、2回として作成・公開しました。

 今年度は、第3回として「魚類の透明骨格標本」を取り上げて準備を進めてきました。しかし、ミュージアムでの撮影等がコロナの影響でできず、断念しました。来年度に実施する予定です。

企画5.東京湾の博物館の連携
 発端は慶應義塾大学アートセンターとの協働プロジェクトで、2019年12月8日に「東京湾再発見・アート×サイエンス講演会」を実施したことです。さらに、以前からお付き合いのある船の科学館や大森海苔のふるさと館に加えてMSMにも参加してもらい、「東京湾岸ミュージアム懇談会」を開催しました。
 2021年度中には、6回(5月11日、8月3日、9月9日、11月17日、12月2日、12月23日)の懇談会をすべてリモートで実施しました。目的は「体験型イベントにおける課題を共有する」ことです。6回の懇談会を通して、問題点を共有し、さらに解決のためのアイデアなどをみなさんで提示しました(↓の図はJamboard上でおこなった問題分析の一例です)。
 懇談会のさらに詳しい内容については、なるべく早いうちに瓦版などで報告する予定です。


企画6.スコットランド海洋研究機構(SAMS)との連携
 以前から共同研究をおこなってきたレズリー メイボン博士(Dr. Leslie Mabon)との連携です。3年ほど前から、スコットランドを訪問して意見交換をするといった計画を立てていたのですが、コロナ禍のために実施できていません。コロナ禍がおさまれば、と考えてはいるのですが・・。

企画7.MSMオンラインセミナー
 企画案では、マリンサイエンスミュージアムで録画した3つの講義を秋の大学祭である海鷹祭で流す予定でした。しかし、やはり新型コロナの影響によって、海鷹祭での出展は中止にしました。
 その代わりとして、「東京湾の今を知ろう Part1」と題して、下の4つのオンライン講義を作成しました。さらにこのオンライン講義を、企画3の海洋ESD実習と協働してワークショップを開催することにしました。まず、年末年始にかけて受講学生にこれらの講義を視聴してもらい、1月11日(火)に学生が対面で各講義に対する質問などをポストイットで作成しました。そして、翌週18日(火)に、講師の先生方と受講生がMSMに集まって(一部リモート参加)、ワークショップを開催しました。その内容については、企画5と同様に、なるべく早い時期に報告します。なお、4つの講義の題目と講師は下のとおりです。
1)「東京湾をまるごとみる」河野 博(東京海洋大学名誉教授)
2)「富栄養化と酸性化」川合美千代(海洋環境学部門 准教授)
3)「栄養塩とプランクトン」片野俊也(海洋環境学部門 准教授)
4)「東京湾のさかなを水で調べる-環境DNA」丸山啓太(同大学魚類学研究室博士研究員)

その他
 当初の企画にはなかったものの、途中で実施した江戸前ESD関連の活動(主に論文です)をまとめます。
1)『沿岸域学会誌』(日本沿岸域学会)の「NPO活動紹介」という欄に紹介文を載せました。題目等は以下のとおりです。
 河野 博.2021.江戸前の海に『学びの環』はつくれるのか~東京海洋大学江戸前ESD協議会の活動報告~.沿岸域学会誌,34(2):48~51.

2)江戸前の海の魚類に関する論文を2本公表しました。題目等は下のとおりです。
 小熊進之介・丸山啓太・澤井伶・中野航平・河野博.2022.千葉県新浜湖の干潟域におけるニクハゼの初期生活史.東京海洋大学研究報告,(18):1-19.
 澤井 怜・中野航平・丸山啓太・河野 博・風呂田利夫・野長瀬雅樹.2022.東京湾内湾に位置する人工潟湖(新浜湖)の魚類相の長期的変遷.神奈川自然誌資料,(43):25~37.