Argoフロートによる海洋上層の変動過程の観測的研究

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 地球全体の海洋観測網をつくり海洋観測研究を行うプロジェクトであるArgo(アルゴ)プロジェクトに参加し,主に北太平洋の海洋上層の変動と気象の関係について研究しています.このプロジェクトでは,プロファイリングフロートと呼ばれる自動海洋観測ロボットを世界中の海に展開 しています.この観測網は,気象観測における世界中の高層気象観測網に対応するものです.
 プロジェクトは西暦2000年に始まりましたが,観測網が充実してきたのは2002年頃からで,研究は始まったばかりです.今のところの研究成果としては,海洋中にある渦の構造の解析(Iwasaka et al. 2002),海洋表層混合層の季節進行の記述(Iwasaka et al. 2006)や海面熱フラックスの変動との比較(Ohno et al. 2007)などです.また,大量のフロートデータを一括に処理して,表層混合層の月平均気候値の作成も行っており,従来の船舶観測を基にした気候値では捉えられなかった新たな知見が得られてきています(Ohno et al. 2004; Ohno et al. 2007).今後は,さらに研究を進めて,気象変化と海洋の様々な変動現象との関係について明らかにし,長期予報や気候変動予測の研究に役立てていく予定です.
 アルゴプロジェクトの詳細は海洋研究開発機構のホームページを参照して下さい.

☆ 中層プロファイリングフロート
海洋中を自動的に昇降して水温・塩分の鉛直分布を計測し,陸上基地にデータを送る自動観測装置のこと(図参照).
☆ 亜表層・中層
海洋の深さは平均で約4000mあり,海面から約数百m程度の深さまでを亜表層(Subsurface)と呼ぶ.大気の変動の影響を強く受けると共に,海洋から大気へ直接影響を及ぼす層と考えられている.中層はおよそ1000mから2000m深の層を指す.中層から深層にかけての海洋循環は,長期の気候変動や海洋中に溶け込む様々な物質が海洋中に広がる様子を調べる上で重要.

参考文献

Argoフロートの模式図 Argoフロート観測システム
観測船からのArgoフロート投入風景(海洋研究開発機構提供)