2.在庫管理の概要 在庫の定義 在庫の種類と役割 在庫管理の目的 在庫管理の内容 2.1 在庫の定義 在庫とは…商品、半製品、原材料などの形で保管または輸送中の棚卸資産をいう。 (2-2),p.93 棚卸(inventory stock taking) 在庫リストをもとに、記帳と実数が一致しているかを、商品ケース、倉庫、配送センターなどでチェックする作業をいう。 全数調査と抜取調査があり、週、月、期ごとなどに定期的に行われる。 2.2 在庫の種類と役割 2.2.1 在庫の種類 2.2.2 在庫の役割 2.2.1 在庫の種類 ○分類方法 (1)在庫の持つ付加価値から見た分類 (2)在庫品の工程上の位置による分類 (3)在庫品の流動状態による分類 (4)時期による分類 (5)数量のレベルによる分類 (1)在庫の持つ付加価値から見た分類 @サービス在庫  顧客が受け入れるレスポンスタイム(顧客に約束した配送時間)を満足させるために持つ在庫である。 Aパイプライン在庫  生産者から顧客へ移動中(トラックの中にある)の在庫である。 B緊急在庫  ストライキとか自然災害とか、予期できない事態に対応するための在庫である。 C安全在庫  補充リードタイムの間で変動する需要に備え、顧客が受け入れるサービスレベルを維持するための在庫である。 D効率的製造在庫  製造ラインのセットアップのコスト効率を改善するための在庫である。 E効率的調達在庫  通常価格よりも安く仕入れることができる特別な機会があった場合に形成される在庫である。 (2)在庫品の工程上の位置による分類 @原材料在庫 A仕掛品在庫  仕掛品(しかけひん、しかかりひん)   仕掛品・・・半製品、半加工品、部品 B製品在庫 C予備品在庫 (3)在庫品の流動状態による分類 @死蔵品 A過剰在庫 B戦略的過剰在庫 C蓄積在庫  季節波動に対応した生産の平準化 D流通経路在庫 E輸送中在庫  鉄道、船 F混載、大ロット化のための在庫  輸送費削減とリードタイムの増加 G補充リードタイムによる在庫  リードタイムと安全在庫 (4)時期による分類 @期末在庫 A月末在庫 (5)数量のレベルによる分類 @最大在庫 A最小在庫 B平均在庫 C基準在庫 D適正在庫 2.2.2 在庫の役割(機能) (1)展示機能  商品を店頭に陳列・展示していることによる消費者への働きかけである。顧客の注目をひき、顧客の購買意欲を刺激し、また顧客に商品を吟味する機会を提供している機能である。 (2)需給適合機能  在庫を保有することにより品切れを防ぎ、品切れによる機会損失をなくする機能である。 (3)経済的発注機能  商品が必要になったときにその都度最小必要量を発注するのではなく、ある程度まとめて一度に発注することにより発注回数を減らし、これによって発注費用を削減する効果をもたらす機能である。 (4)製造の計画・平準化機能  経済的な操業を可能とし、製造原価の安定、コスト・ダウンの効果をもたらす機能である。つまり、顧客の需要は大抵変動しており在庫を保有していないとすると、ピーク時の需要を満たすためには過大な設備投資を行なわなければならず非常に不経済である。したがって、在庫を保有することにより、需要の変動のショックを吸収し計画的な生産の実施や平準的な操業水準を維持する必要がある。 (5)輸送の合理化機能  配送センターなどの結節点に在庫を保有することにより、輸送を合理化させる機能である。例えば、工場から消費者に商品を輸送する際、小口商品を直接工場から個々の消費者に向けて配送していたのでは輸送費用がかさむため、途中の配送センターに商品をまとめることにより輸送にかかる総費用を削減する効果をもたらす機能である。 (6)流通加工機能  流通加工の場を提供する機能である。今日、多様化する消費者のニーズにこたえるためには、工場生産ですべてを満足させようとするのは必ずしも経済的ではない。むしろ在庫を持つ結節点において、一部の加工や組立てを行なった方が経済的な場合が生じている。 2.3 在庫管理の目的 2.3.1 在庫に対する業務の分類 2.3.2 在庫管理の目的 2.3.1 在庫に対する業務の分類 一般に在庫に対する企業の業務は、次の3つに大別される。 (1)在庫品そのものの保管作業活動 (2)在庫品の数量的な計画と統制 (3)在庫品の移動記録  この内、在庫管理といわれているものは、主として(2)の「在庫品の数量的な計画と統制」であり、(1)と(3)は付属的な業務活動である。 2.3.2 在庫管理の目的 在庫管理の問題は、在庫の機能を十分に発揮させるとともに、在庫を保有するためにかかる在庫関連費用を出来るだけ安くする在庫管理方式を見出し、その方式に従って在庫を管理することである。 この在庫管理の目的は、次の5つに分類される。 (1)在庫投資の節減 在庫を適正量保有することによって、在庫に対する投資資本を節減することが出来る。 (2)運転資金の潤沢化 在庫投資を節減することにより資金の固定化が減少し、資金が潤沢になる。 (3)操業水準の安定化 在庫を適正量保有することにより、操業水準を安定化させることができ、製造原価を減少(あるいは維持)できる。 (4)在庫の費用の節減 在庫によって発生する保管費、発注費、機会損失費などを在庫を適正量保有することによって節減できる。 (5)生産遅延および品切れの防止 在庫を適正量保有することにより、生産の遅延、品切れを防止することができる。 2.4 在庫管理の内容 ●在庫管理問題 在庫管理問題に対するアプローチには、次に示す2段階の手順がある。 (1)在庫を保有する結節点(在庫点)の立地の選定 (2)在庫管理システムの設計 アプローチの第1ステップとして(1)の「在庫点の立地の選定」を考える必要がある。 次にアプローチの第2ステップは、個々の在庫点における(2)の「在庫管理システムの設計」である。在庫点の数、立地、規模が決定したならば、各在庫点にどんな商品を配置し、それらの商品をどんなシステムで管理するのかを決定しなければならない。 ●在庫計画 何を    品目 何時    発注間隔 どれだけ  発注量 余裕    安全在庫、サービス率 ●在庫管理の内容 (1)品目の分類 (2)需要予測 (3)サービス率の設定 (4)調達期間(リードタイム)の設定 (5)在庫管理手法の設定 参考文献 (2-1)日通総合研究所, "物流用語辞典", 日本経済新聞社, 1992.7 (2-2) 関連資料等 (1-a)