沿岸域工学研究室では、沿岸・海岸過程の支配要因である波・流れ場についての研究を中心に漂砂、構造物、生態や水質に関わるさまざまな問題の解決に取り組んでいます。数値シミュレーション,水理模型実験,現地観測などのさまざまなアプローチにより沿岸域の開発と環境のバランスの実現をめざします。


 
 波・流れ 

沿岸域での波・流れの数値モデルの開発
海岸構造物の影響評価や物質輸送の予測、あるいは防災といった観点から、砕波帯や遡上域を含む浅海域での波浪や流れ場の数値モデルの開発を行っています.用途に応じて,鉛直積分型波動モデルや3次元LESモデル、粒子シミュレーションなど扱うモデルは多岐にわたります。研究室内にはクラスタシステムを備え、大規模計算にも分散処理で対応しています。

砕波帯内での流体運動に関する実験的研究
海岸近傍の水域は、砕波による乱れや海浜循環流の発達によって物質輸送・拡散が卓越する場となっています。この砕波帯内での流体運動には未だ不明な点が多く、本研究室では造波水槽内でLDV(レーザー流速計)やADV(超音波流速計)による乱れ成分を含んだ流速場の詳細な計測を継続的に行っています。

 漂砂・地形変化
砕波帯内での底質移動に関する研究
わが国の多くの海岸では土砂需給のバランスが崩れ、海岸侵食が問題となっています。海岸付近での地形変化予測の高精度化のために、砕波帯内での底質の巻上げや沈降を含めた輸送機構を明らかにするため、沈降室内実験や大型実験、現地での観測、浮遊砂濃度計測手法の開発,数値モデルの構築、などさまざまな研究を行っています。
津波による地形変化に関する研究
2004年のインド洋津波の際に、海岸に砂堆のある地域では被害が比較的小さかったことを受け、砂堆・砂丘の津波低減効果に関する研究を行っています。オレゴン州立大学と共同で津波による砂堆の侵食について、大規模造波水槽による実験を実施しました。さらに得られたデータを元に、津波による地形変化の数値シュミレーションを行っています。
 生態
鹿島灘におけるマクロベントス調査
鹿島灘砂浜域においてマクロベントスの分布特性および経時変化の現地調査を実施しています。海岸地形変化や海岸保全施設などの人為的影響との関連を調べています。
波・流れによる生物輸送に関する研究
流れ藻類(アラメ)や底生生物(アサリ)を対象に振動流・定常流下での輸送機構を明らかにするため、造波・流水水槽において実物あるいは模型を用いた基礎実験を行っています。
 構造物
環境改善型波浪制御構造物の開発
漁港などの中小港湾で水質改善を目指した波浪制御構造物の開発サンゴ定着の可能性検討のためのブロック周りの流況評価など海岸・沿岸域の利用や環境を考慮した新たな構造物の開発や評価などを行っています.
沿岸・海岸構造物の設計手法に関する研究
地球温暖化に伴い、海面上昇が予測されています。海面上昇は既存構造物に対して設計外力の増大として作用します。信頼性設計法の考え方に基づき、海面上昇を考慮した防波堤の設計法を考案しています。
 水質
物質循環・水質予測・評価モデルの構築
海水流動を軸とした物質循環モデルを構築し、水質・生態系の評価を試みています。二枚貝の役割についても研究しており、これらを組み合わせた生態系・環境評価指標の開発をめざしています。また近年、東京湾や大学周辺の運河で水質観測も行っています.