- 二酸化炭素は大気に放出されているだけではない。例えば2000年から2005年の5年間の平均で,人類の活動による二酸化炭素の57%は大気中に放出されていたが,12.5%は森林に吸収されたとの報告がある。そして,残りの30.5%は海に吸収されていたのである。森林の二酸化炭素(CO2)吸収量はよく知られており,グリーンカーボンとも呼ばれている。海の吸収量は,それよりも大きく,ブルーカーボンと呼んでいる。
- 2009年に発表された国連環境計画(UNEP)報告書「Blue Carbon」においては,海洋で生息する生物によって吸収・固定される炭素がブルーカーボンと命名されている。 海の吸収量の10〜20%程度は,海藻等の海洋生物により海底堆積物として主に沿岸域で固定されると考えられており,沿岸域の環境保全は重要である。
- 沿岸部の海草藻場は,1平方kmあたり8万3千トンもの炭素を地中に蓄えていることが報告された。一方,同じ面積の森林は、3万トンの炭素を原木部分に蓄えているだけだ。船舶への電力供給,海洋再生可能エネルギーおよび海水ヒートポンプ等の海洋関連二酸化炭素排出削減技術のブルーリソースだけでなく,ブルーカーボンも視野に入ってきた。
- 沿岸域の海草の地中に1200年もの間,安定して炭素を蓄積してきた層。今から1200年前は,平安時代のはじめで弘法大師が高野山を開いた年代。この時代から炭素を蓄積してくれていた。
炭素を蓄積してきた層
- 海が吸収する二酸化炭素(ブルーカーボン)を担う海藻と海草の違いは大きい。後者はうみくさと読み,海から陸へと進化した植物の中で再び海に戻ったものだ。動物で言えばクジラやイルカのようなもの。海藻の根は岩などに接着するだけのものだが,海草は陸上植物のように地下茎から栄養を吸い上げる。
典型的な海草「アマモ」
- 海は頑張ってくれているが,吸収された二酸化炭素に依って,ゆっくりと酸性化している。酸性化は,稚魚やサンゴの成育に影響を与え,種の多様性や養殖業,それに海に食糧や経済の基盤を置く国々は大きな影響を受けると考えられ,事態は深刻である。英国の研究者らが2013年に発表した第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)報告書によると,海の酸性化は過去3億年で最も速いペースで進んでいるとみられている。
- 海の中に海藻類が生い茂り,多種多様な海洋生物が多いということは,海の中に固定化された炭素が多いということである。海藻も魚も炭素でできており,これらがいなくなることは空気中の炭素が増えるということになる。同じように大地に緑が多いということも,そこに固定化された炭素が多いということである。草木も炭素でできている。空気中の炭素は,メタンや二酸化炭素といった地球温暖化物質である。空気中の炭素を減らすためには,青い海と緑の大地を守ることが大事だ。
- 海藻や植物プランクトン等が吸収する二酸化炭素ブルーカーボンは、地球温暖化防止のクレジットとして認められていない。ただし、海藻や植物プランクトン等にクレジットという価値を持たせ保護していくことは、沿岸域の生態系および環境保全に重要なことは明らかである。
このため、この量をクレジットにすることを自治体等で決め、クレジットへの資金供給を行う必要がある。地球温暖化防止のクレジットとして認められている海洋関係のエネルギー削減技術等のブルーリソースと、海藻や植物プランクトン等のブルーカーボンを一緒に扱うことによって、全体として資金に裏打ちされたクレジットの仕組みが成立することになる。
大都市横浜(八景島)の海の中
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