国立大学法人 東京海洋大学 海洋科学部 食品生産科学科

ニュース記事「Rahmanさんの論文」

 

Rahmanさんの論文「Effects of pH on the Fluorescence Fingerprint of ATP」がTransactions of the Japan Society of Refrigerating and Air Conditioning Engineers に掲載されました。その内容は以下の通りです。 

 

 近年、食品の品質を非破壊的に評価する有効な手段として、蛍光指紋(励起波長と蛍光波長の組み合わせにおける蛍光強度を網羅的に計測する方法)が注目されている。とくに魚肉中のアデノシン三リン酸(ATP)の含有量を蛍光指紋により計測できれば、魚肉の初期鮮度の非破壊測定に有用であると期待される。一方、ATPの蛍光スペクトルはpHなどの各種条件に左右されると推測されるが、とくに赤身魚では致死後の魚肉中ATPの急激な減少とpH低下はほぼ同時期に進行するため、蛍光指紋によるATP計測の際にはpHの影響を考慮することが不可欠と考えられる。そこで本研究では、まずATP標準溶液を用いて、蛍光指紋データに及ぼすpHの変化の影響をモデル的に調べた。その結果、蛍光シグナルの強度はATP濃度のみならず試料のpHの影響を受けることが明らかになった。ATP溶液における最大の蛍光強度はpH5.0の条件で得られ、pHの上昇に伴い急激に減少した。ATP溶液を凍結した場合も、最大蛍光強度の得られる波長条件は類似していた。また、僅かなpHの変化は、蛍光指紋スペクトル特性やその強度のみならず、ピークの得られる波長条件にも影響した。本研究で用いた手法を発展させることは、各種成分を含む食品の品質評価における蛍光指紋の有効性を保証し適正化するための一助になると考えられた。

 

 (Md. Mizanur Rahman , Mario SHIBATA, Naho NAKAZAWA, Tomoaki HAGIWARA, K. Osako, E. Okazaki Volume 33, October 2016, Pages 405-410)