次世代水上交通システムの開発

研究背景

日本は島国であり離島も多数存在していることや、東京、大阪等の大都市部においても運河が巡っており陸上の交通手段が飽和してきていることから舟運の活用が期待されている。近年、陸上においては、低環境負荷を実現する技術開発や自動運転を実現するための技術開発が積極的に行われている状況でもあり、改めて舟運の活用を考えるのであれば、これら科学技術の導入を含めたものとすべきである。東京海洋大学では、次世代の水上交通システム(Autonomous Waterborne People Mover, AWPM)の研究開発を行っている。

 

水運活用の具体例

日常の交通手段としての水上バス&タクシー
交通渋滞や満員電車など、陸上の交通手段は飽和に近い状態であり、この利用者の一部を水上交通の利用者に誘導することが出来れば混雑緩和が期待できる。
トラックの代替としての物資輸送手段
物流に関しても陸上は飽和してきており、この一部を運河の発達している地域においては舟運に切り替えることが出来れば有効である。
観光資源としてのクルーズ
屋形船や遊覧船など昔から運航されているが、世界的にみても、観光資源としてのクルーズの人気は非常に高い。
災害支援活動時の手段
日本は自然災害の被害を受けることも多く、その際の災害支援物資の輸送路を複数確保しておくことは重要であり、水運の活用も期待される。

 

水上交通システムとしての在るべき姿

ゼロエミッション化
地球環境保護対策は喫緊の課題であり、船舶においてもEmission Control Area(ECA)が設定されるなどゼロエミッション化技術の導入は必須である。このためにも再生可能エネルギーを利活用できる船舶とすることが必須である。
自動化ならびに管制機能の整備
海難事故の75%以上は人的要因によるものであるため、自動化技術の導入によって安全性の向上が期待できる。災害時の活用を考えても、被災地における人的負担の低減、複数船舶の同時運航実現という観点からも自動化は重要である。一方、すべてを機械任せにするのではなく、鉄道と同様に運航状況の適切な監視を行うことも重要である。
災害時対応
災害時に使用するためには、常日頃、いつでも利用できるように保守・整備を行っておく必要があり、同時に地域住民の方々にも利用できることを認知しておいてもらう必要がある。