フォニックス (綴り字と発音の関係)

この章では英語の発音と綴り字の関係について、特に母音字に焦点をあてて解説します。

母音字の短音と長音 ・ 2重子音字の働き ・ 母音字+r ・ /w/ の後の a と o ・ 2重母音字 ・ c と g の2つの読み方


母音字の短音と長音

a, e, i, o u と y の読み方

  短音 長音   短音 長音
  hat hate   hop hope
  pet Pete   cut cute
  bit bite      

左右の語の発音の違いに注意しながら、上の単語を聞き比べてみましょう。

左側の単語の最後に e を加えると、e 自体は発音されないのに、前の母音字の読み方が変わることがよくわかるはずです。

左側の発音を母音字 a, e, i, o, u の「短音」、右側の発音を「長音」と呼び、短音の方は、上が開いた半円のような記号を使い 長音のほうは上に線を引いて、以下のように表すことがあります。 

短音  hăt, pĕt, bĭt hŏp, cŭt   

長音  hāte、 Pēte、 bīte,    hōpe,  cūte  

このように子音字の後に登場する e には、この子音字を飛び越えて、その後に控えた母音字の読み方を「長く」する働きがあるのです。

それぞれの母音字の「長い」発音は、個々のアルファベットの名前と同じ、「エイ」「イー」「アイ」「オウ」「ユー」となることに注意してください。また gym, type といった例でもわかるように、 y は母音字 i と同じ働きをすることがあります。

ではここで母音字 a, e, i, o, u と y の最も基本的な読み方のルールを覚えましょう。

●1音節語では、単語の終わりに子音字だけがつづけば、前の母音字は短音

●単語の終わりが「子音字+e」なら、前の母音は長音になる。

この規則を知っていれば、flag, depth, trim, dock, tug などの母音字はみな「短く」発音され、mate, mile, smoke, fume などでは、「長く」発音されることがわかり、何も辞書で発音を調べなくても、簡単に読めるのです。

このように発音と綴り字の規則を学習しながら綴りを覚える方法は phonics フォニックス と呼ばれ、実際に英語圏の子供たちは、このようにしてつづりを学習していくのが普通です。

発音上の注意

短音の中で日本人が注意しなくてはならないのは、短い a, o, u, の区別です。どれも「ア」のように聞こえてしまうことは、第3章の「3つの「ア」」で学習しました。もう一度復習してみてください。

とくに短い u を 「ウ」と発音するのは、英語では例外であることに注意しましょう。たしかに push, bush, bull, pull, full, などでは「ウ」と発音されますが、これはあくまで例外なのです。

長音の方は、それほど問題ありませんが、長音の o と au, aw とr の入った or の発音の区別(3つの「オー」にジャンプ) との区別をしっかりつけるようにしてください。

o と v

「例外のない規則はない」といわれますが、母音字の長短に関する規則にも例外があります。まず綴り字が o なのに発音は 単音の u になる単語が数多く、しかも基本的な単語に多く見られます。

短音の u と読まれる o : come, love, dove, ton, mother, oven, compass, etc.

中でも ton と compass には注意してください。

また love, dove にみられるように英語では最後が v で終わる単語は Slav のような外来語に限られ、e には前の母音字を長音にする力がありません。同じ ove でも love と drove では発音が違い、前者は短い u 、後者は長い o となります。


2重子音字の働き

ではここで短音を含んだ hop と 長音を含んだ hope を過去形と進行形に変えてみてください。

正解は hopped, hopping と hoped, hoping ですが、hop では最後の子音字を重ねなくてはならない理由がよくわかりますね。そうしなければ hop とhope の区別がつかなくなってしまいます。このように2つ重ねた子音字(2重子音字)には、前の母音字が短音であることを示す働きがあるのです。

中学校で、big - bigger, run - runner, shop - shopping などの例で、最後の子音字を重ねるよう口をすっぱくして指導されたのは、みな前の母音を短く読ませるためなのです。

そこでこの規則をまとめておきましょう。

●同じ子音字が繰り返された2重子音字の前の母音字は「短音」になる。

以下の例を見てください。子音字が重なっている場合はみな長音に、子音字が1つの場合は短音に読まれています。

latter later   dinner diner   ladder radar

上の例では2重なら「短音」、子音字ひとつなら「長音」となっていますが、実は子音字がひとつだけのときは、短音になることも比較的多いのが、英語の綴り字の宿命的欠点なのです。以下の例をみてください。

finish final   Saturday Satan

ひとつしかない n や t の前の母音字は、finish や Saturday では「短く」、final や Satan では「長く」発音されます。日本語では「サタン」にあたる悪魔の Satan も、英語では 「セイタン」と長音の a で発音されます。

ではここで練習をしてみましょう。次の単語を自分でどう発音するか考えてから、正解の発音を聞いてみてくだささい。

labelmeter, Egyptevening, virusSiberia, nullultrasound

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母音字+r の短音と長音

5つの母音字 a, e, i, o, u の後に r が続いた場合には、r と前の母音字が合体して発音されるので、最初に紹介した5つの母音字のルールは当てはまりません。car を見て「キャル」のように発音する人はいないでしょうが、昔の英語ではこんなかんじの発音だったのです。そこで現代の英語でも、r の入った短音・長音という捉え方をすると、たとえば最後の e の働きや、どういう場合に r を重ねるかといった点で、説明が大変簡単になります。まずは発音を聞いてみてください。

  短音 長音   短音 長音
  car care   cur cure
  her here   for fore
  fir fire      

まず短音ですが、er, ir, ur はみな同じ発音になります。第3章の「2つのアー」で学習した fur と同じ母音で、最初から舌先が反り返った母音です。綴り字 ar では「アー」と口を大きく開けてから最後に舌を反り返らせる音です。 or と ore は同じ発音で、「オ」と言ってから舌を反り返らせます。

are, ere, ire, ure は、長音の a, e, i, u の名残を最も留めていますね。いずれも最後は舌を反り返らせて終わるのですが、「エア」「イア」「アイア」「ユア」となんとなく「エイ」「イー」「アイ」「ユー」に近い発音です。

短音の場合には最後の子音字を重ねて派生形を作るという規則は、実はこの場合にも当てはまります。 star (星印をつける)と stare (見つめる)という動詞を過去形にしてみましょう。もしも最後の r を重ねないと、どちらも stared となってしまいますから、star では starred と r を重ねます。同じように occur, refer, stir といった動詞の派生形は occurred, referring, stirring と r を重ねることになります。この場合最後の音節にアクセントがあるところに注意しましょう。offer (提供する)では、アクセントが第1音節(ファー)ですから、最後の r を重ねる必要はありません。

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/w/の後の a と o

まずは下の表の左右の単語を声に出して読んでから、発音を聞き比べてください。

  dash wash
  far war
  Jon won
  fork work

左側の単語では、a, ar, o, or はすべて規則どおりに短く読まれますが、最初の子音が w に変わった右側の単語ではすっかり発音が変わっています。

いっけん出鱈目のような気がするかもしれませんが、w の後では a を o、o を u に読み替え規則どおりに発音すればよいのです。

wash = wosh

war = wor

won = wun

work = wurk

というわけです。 英語の綴り字では、wh や qu は /(h)w/ や /kw/ と w の音を伴って発音されるので、 qu や wh の後でも同じことが言えます。そこで次のルールを頭に叩き込んでおきましょう。

●w, wh, qu の後では a を o、o を u に読み替えて発音する

以下にこの規則を当てはめて発音できる単語を示すので、発音練習をしてみてください。特に warning を「ワーニング」、warping end を「ワーピングエンド」、wharf を 「ワーフ」のように読む人が多いので、注意してください。worship を「ウォーシップ」のように発音すると war ship すなわち「軍艦」と間違えらかねないので、注意してください。

a ----> o

wander, watchswanwhatsquash,  quality  

warwarmwarningwarping endwharf, quarter

o ----> u

wonwonder

workworld, worm gearworship

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2重母音字

英語には、green, book, head, about, cow のように、ee, oo, ea, ou, ow といった2つの母音字が合わさって(2重母音字)、1つの母音を表す場合があります。このセクションでは、2通りの読み方があったり、日本人学習者が注意しなくてはならない以下の2重母音字を解説します。

eu, ewau, aw, oa, orou, owea, ooee, ei, oi, lyai, ay, ei, ey 

eu, ew (=長音の u )

まずは比較的簡単な例から入りましょう。 eu, ew は長音の u と同じで「ユー」と発音されます。 しかし r, l, s の後では 「ウー」と発音されます。これは、すでに学習した長音の u にも当てはまります。そこでルールとして覚えてしまいましょう。

r, l, s の後では、長音の u, eu, ew は「ウー」と発音される。

eu, ew: neutralfewnew

r, l, s + u/eu/ew : glue, screw, sewage

glue や screw を、グリューやスクリューのように発音しないようにしましょう。日本語では一般に船の推進器にあたるものを「スクリュー」と読んでいますが、正しい発音は「スクルー」です。しかし海事英語では推進器を screw と呼ぶことはなく(こちらは「ネジ」を表す)、propeller を使うので、注意が必要です。また日本語の「ドライバー」は必ず screwdriver と呼びます。この点にも注意してください。

au, aw, oa, or

綴り字 au, aw で表される音は、口を大きくあけて「オー」と伸ばす母音で、途中で口の構えも、したがって母音の音色も変化しません。ローマ字読みにつられて、launch を「ラウンチ」と発音する人が見受けられますが、正しい発音は「ローンチ」です。これに対して、綴り字 oa で表される母音は、長音の o と同じで唇の丸めを伴った「オ」から「ウ」へと音色が変わる母音です。この2つは、rの入った綴り字 or と似たように聞こえますが、r が入った場合は舌先が反り返る r の音がはいります。3章の3つの「オー」を再度復習してみてください。

au, aw: launch, caution, law, saw

oa = 長音の o : boat, load, coat

or : ore, bore, port

oa は例外的に au, aw と同じ発音になる場合があるのですが、それは broad, abroad, broadcast のように broad が登場する場合に限られています。oa を見たら o の長音 と考えておけば、間違いありません。au は非常に例外が少ないのですが、gauge (計器)には注意が必要で、これは長音の a 扱いで「ゲイジ」と発音されます。

ou, ow

綴り字 ou に対応する規則的な発音は out, south, about などに見られる「アウ」です。ローマ字読みにつられて「オウ」と発音してはいけません。ただしこの ou には例外的な発音が多いので少し厄介です。たしかに soul, shoulder, though, through などでは例外的に長音の o と同じように 「オウ」と発音されるのですが、それはあくまでこれら小数の単語に限られた例外なのです。以下に様々な ou の発音ををまとめておきます。

ou の発音

規則は「アウ」: southbound, aground, compound

短音の u : trouble, country, double

長い「ウー」: group, route, soup

長音の o : soul, shoulder, though, though

長く伸ばす「オー」 = au : bought, thought, sought  (これはほぼ ought に限られる)

短い「ウ」 : could, would, should

ou と綴って単音の u となる語は比較的多いのですが、他の例外はかなり限られているので、心配ありません。route などは規則どおりに 「ラウト」と発音する人もいるぐらいです。

ough という綴りは、最後に t が続いた動詞の変化形の場合、上の例のように au と同じ発音になりますが、その他の場合は、ou の発音と gh を読むか読まないか、また読むとすればどんな音かで、様々なバリエーションがあります。

これに関しては誰が作ったのかわからないのですが、以下のような面白い詞ががあります。実際の発音を聞いてから、正解のページを見てください。

I take it you already know of TOUGH and BOUGH and COUGH and DOUGH.

Others may stumble, but not you,

On HICCOUGH, THOROUGH, LAUGH AND THROUGH.

Well done! And now you wish, perhaps,

To learn of less familiar traps.

Beware of HEARD, a dreadful word

That looks like BEARD and sounds like BIRD.

And DEAD-it's said like BED, not BEAD.

For goodness sake, don't call it DEED!

Watch out for MEAT and GREAT and THREAT.

They rhyme with SUITE and STRAIGHT and DEBT.

---正解ページへ---


ow の発音

綴り字 ow は、かなり厄介です。というのも now の最初に s をつけると snow に変わることでもわかるように「アウ」と発音する場合と「オウ」(長音の o や oa と同じ発音)と発音する場合が半々なので、とにかく一語一語暗記してしまうしか、方法がないのです。

とくに bow には注意しましょう。「船首」や「おじぎ(をする)」の bow は「バウ」ですが、「弓」の意味のときは同じつづりで「ボウ」です。rainbow (雨で出来た弓 = 虹)の bow と覚えておけば大丈夫です。「許す」の allow は「アラウ」。これを「アロウ」と読む学生が後を絶たないので、十分注意してください。「密航者」の stowaway では、「オウ」です。

ea と oo

この2つの綴りには長短2つの発音があります。

短い ea = 短い e : breadthaheadspreader

長い ea = 長い e : sea, leak, grease

短い oo : lookout, hooklogbook

長い oo : cool, loosen, room

ea には悪名高い great, steak, break という3つの代表的な例外があります。この3つの単語で、ea は長音の a に対応し、grate, stake, brake と発音は同じです。この3つは「すりおろす」「くい」「ブレーキ」ですから、発音が同じでも綴りを変えることで、書き言葉での区別がなされていることになります。

ee, ie, oi, oy

この4つは比較的例外が少ないので話が簡単です。 ee は長音の e と同じで「イー」です。oi, oy は特に単語の終わりでは「オーイ」のように長く発音されます。またLの前では、「オイ」よりむしろ「オエ」に近く聞こえるので注意しましょう。

ee: keel, lee, feedwater

ie: dieselpiece

oi, oy: oil, hoist, boiler, toy, boy

ai, ay, ei, ey, (= 長音の a )

ai, ay : sail, chain, Mayday, bay

ei, ey: eight, weighttheyprey

ai, ay に関しては例外が少ないのですが、 aisle だけは覚えておかねばなりません。「通路」にあたる aisle は、「エイル」ではなく長音の i で、「アイル」です。Thai も やはり同様に「タイ」です。しかしこれ以外の ai のつづりは規則どおりに長音の a 「エイ」と発音しておけば間違いありません。くれぐれもローマ字読みにつられて、「アイ」と発音しないことです。

ei に関しては、 either, neither と、receive, perceive, conceive など -ceive で終わる単語を押さえておきましょう。この場合は、長音の e 「イー」となります。either と neither に関しては、「アイザー」「ナイザー」という英国に多い発音をするアメリカ人も見られます。

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c と g の2つの読み方

綴り字と発音の関係を扱ったこの章も終わりが近づきました。子音字は規則的な発音が多く、学習上それほど問題はないのですが、 c と g は、2通りの発音があるので、最後にこれを扱います。

まずは以下の単語を声に出して読んでみてください。

軟音:centercircuit,  cylindervice

硬音:cargo,  cold,   current,  clock,  electric

軟音:generator,  gin,   gyro,   huge

硬音:galegolf,  gulf,  grinder,  leg

それぞれの文字に2通りの読み方があることがおわかりいただけると思います。

同じ c でも、軟音の場合は、センター、サーキットのように 「サ行の」 S 、硬音の場合は、カーゴ、コールドのように 「カ行」の K と発音されます。g の軟音は、ジェネレータ、ジンのように 「ジャ行の」 J、硬音は、ゲール、ゴルフ のように 「ガ行」の G です。

軟音・硬音というのは、S や J が 「ス・ジュ」のように柔らかい印象があり、反対に K や G が「クッ、グッ」のように硬い印象があることからついた名前で、英語では soft c とか hard g のように言います。

この2通りの発音のルールを以下にまとめてみましょう。

c と g は、 e, i, y の前では軟音で、S, J

その他の場合は硬音で K, G と読む

この規則は、実はフランス語から持ち込まれた規則で、古くからある英語の単語、特に g で始まる girl, give, get, などに例外が多い点に注意が必要です。

ここで hug と huge という単語を比べてみてください。最後の e は発音されなくても、前の母音字の発音を長音に変える働きがあることはもう学習しました。さらにこの e は前の g を軟音にするので、 「抱きしめる」のhug (ハグ) に e を加えることで、huge の「ヒュージ」へとまさに「巨大な」変身を遂げることになります。

big の比較級を作るときに bigger と g を重ねることは、前の母音字が短く発音されることを示すとともに、実は g を硬音の G と読ませる働きがあるのです。もし g を重ねないと、biger は「バイジャー」と発音されてしまいます。

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