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心電図測定による魚類の運動特性の解析 Apr.99. Meeting of the Japanese Society of Fisheries Science
 

心電図測定による魚類の運動特性の解析

°伊東裕子・秋山清二・有元貴文(東水大)

【目的】魚類の心電図測定に関する実験をもとに,遊泳時及び遊泳後の心拍数変化を指標としてコイとマダイの運動特性を解析し,運動負荷量と心拍数ならびに運動後の回復過程について考察を行った。

【方法】実験には小型回流水槽(水路70×30×20cm)を用いた。平常時10分の心拍数測定の後,流水中での強制遊泳時10分,遊泳後60分について連続して測定を行った。遊泳速度は,コイ(11.2〜13.2cm)の実験では1,2,3,4,5 BL/s,マダイ(15.4〜17.0cm)の実験では1,3,5,7 BL/sに設定した。さらに,遊泳時間を60分にした場合について,コイで1,2 BL/s,マダイで1,3 BL/sの条件で,心拍数変化を観察した。平常時心拍数として,コイでは約30〜60回/分,マダイでは約50〜100回/分とそれぞれ測定結果の分散が大きく現れた。そこで,平常時に対する運動時心拍増加率としてデータを扱い,運動後の回復過程を含めた運動特性の解析を行った。

【結果】コイについて,遊泳速度1BL/sでは大きな心拍数変化はみられなかったが,2 BL/sでは遊泳時に急激な増加がみられ,最大で平常時の約2.6倍となった。しかし,遊泳速度をそれ以上に速めても心拍数は平常時の約1.5〜3倍にとどまった。遊泳後の心拍数は,2 BL/sの場合には早い段階で平常時レベルまで回復したが,3 BL/s以上になると遊泳速度の増加に伴い回復時間が延長した。遊泳時間を60分にした実験では,遊泳時,遊泳後の心拍数変化は1,2 BL/sとも遊泳時間10分の場合と同様であった。マダイについて,10分の遊泳条件では3 BL/s以上で心拍数の増加がみられたが,平常時の1〜1.5倍とコイに比べて増加の割合は小さかった。遊泳後の心拍数は,低速段階では短時間で平常時レベルまで回復したが,5 BL/s以上になると回復時間が長くなる傾向にあった。遊泳時間を60分にした場合,遊泳時の心拍数増加は1,3  BL/sとも10分の遊泳条件と同程度であったが,3 BL/sの場合に回復時間の延長する傾向が認められた。