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Abstracts list of Research

S電位を指標とした魚の紫外線感覚の確認 Oct.96. Meeting of the Japanese Society of Fisheries Science
マダイの単波長光に対する網膜運動反応とUV感度Oct.96. Meeting of the Japanese Society of Fisheries Science

 S電位を指標とした魚の紫外線感覚の確認

宮城美加代・川村軍蔵・安楽和彦(鹿児島大)


【目的】数種の硬骨魚類が紫外線(UV)感覚をもち、そのセンサは波長350ー370 nmに感度のピークをもつ錐体視細胞(single cone)であることが知られている。本研究では、UV感覚を調べる新しい実験方法として、網膜の水平細胞の活動電位であるS電位を指標とする手法を確立し、実際に多種の魚類のUV感覚を調べ、さらに、UV受容視細胞を特定するために網膜組織の観察を行った。
【方法】S電位記録装置の通常の刺激光源として使用される波長403ー700 nmの11種類の単波長光に、368 nmと337 nmの2種類のUVを刺激光として加えた。活個体から得た新鮮な網膜の水平細胞にガラス微小管電極を挿入し、電極を固定してL型S電位を記録し、応答の再現性を確認した後、UVに対する応答を記録した。S電位にはC型とL型と称される2種類の応答型があるが、本研究ではL型のS電位を指標とした。また、S電位記録に用いた魚と同種の魚の網膜切片標本を通常の手法でHE染色し、錐体の種類を調べた。
【結果】網膜の紫外線感覚はS電位を指標として確認できることが明らかになった。L型S電位が記録された13種の内、コイ、ホウボウ、ブルーギル、コバンザメ、クロサギ、ヒラメ、メイタガレイの7種は2種類の紫外線刺激に応答し、マダイとヘダイは368 nmの紫外線刺激のみに応答した。コノシロ、コショウダイ、クロダイ、マトウトラギスの4種では紫外線刺激に対する応答は記録されなかった。この結果より、魚種によって紫外線感度の波長域に差があり、紫外線感覚を持たない種のあることが分かった。網膜組織標本の検鏡の結果、紫外線感覚を持つ海産魚の網膜には、central single coneとtwin coneは存在するがadditional single coneは存在せず、紫外線に対する応答が得られなかったコノシロとコショウダイでは、additional single coneが存在しない上にcentral single coneの密度が非常に低いことが分かった。以上の結果から海産魚のUV受容視細胞は、central single coneであることが考えられた。

マダイの単波長光に対する網膜運動反応とUV感度

宮城美加代・川村軍蔵・安楽和彦(鹿児島大)

【目的】 色覚をもつ魚類は赤、緑、青の3種類の錐体をもつ。また、感紫外線錐体をもつ種が知られている。もしも、これら3種の錐体と感紫外線錐体がそれぞれの感度ピーク波長の単色光に特異的に反応して網膜運動反応をするならば、組織学的手法によってこれらの錐体を特定できる。この可能性を特定するために色覚をもつことが確認されているマダイを用いて、単色光で刺激したときの網膜運動反応を調べた。
【方法】 暗順応させたマダイ稚魚(全長79-105mm)2尾に単波長光を30分間照射した後に断頭し、頭部をブアン固定した。固定頭部から眼球を摘出、網膜小片を定法でHE染色し、光顕標本とした。刺激光はキセノンランプを光源とし、609、551、466、368、337nmにピークをもつ干渉フィルタを通し、強さはNDフィルタによって種々変えた。また、種々の強さの白色光も用いた。
【結果】 白色光と337nmの単波長光を除く単波長光の照射によって明瞭な網膜運動反応が見られたが、刺激波長に関わらず全錐体が同時に移動し、感度ピーク波長に特異的に反応する移動は認められなかった。可視範囲では刺激光の種類に関わらず0.04μmol/m2/s以上の光量子量で全網膜が明順応したが、609 nmではこれより低い刺激量で錐体移動がみられた。UV337nmでは本装置で得られた最大刺激量1.7×10-2/mW/cm-2でも錐体移動がなかったことから、供試魚のマダイ稚魚は368nmには感度をもつが、337nmには感度をもたないといえた。このサイズのマダイ稚魚の網膜には、感紫外線錐体だと思われるadditional single coneが錐体モザイクから消失していた。