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マダイの行動とストレス測定に関する基礎的検討 | Apr.95. Meeting of the Japanese Society of Fisheries Science |
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こぎ刺網で漁獲されたシロギスのストレス測定 | Apr.97. Meeting of the Japanese Society of Fisheries Science |
角田篤弘・秋山清二・有元貴文(東水大)・井上喜洋(水工研)・Frank
Chopin(カナダメモリアル大海洋研)
【目的】近年、漁獲行為に遭遇した資源の生残性が問題となっており、漁獲過程において対象魚がどの程度のストレスを受けているかが注目されつつある。しかし、ストレスの測定指標や、測定方法などの基本的な事項が未だ確立されていない。そこで本実験では、ストレス測定のための掬い上げがストレッサーとして実験結果にどの様な影響を及ぼしているか、そしてどのようなサンプリング方法が適切であるかを明らかにすることを目的とし、血中コルチゾール量の変化を指標に用いて検討を行った。
【方法】全長30cm前後のマダイPagrus major 43尾を実験に使用した。これらを約20日間、海水水槽(170t)内に設置した網生け簀(4.5 )および海水水槽(5.3t)で飼育した。その後、1尾ずつ計19尾をタモ網で掬い上げ尾鰭基部より血液のサンプリングを行うと同時に、すべての魚から採血し、再び水槽に戻すまでの時間を記録した。次に残りの24尾を用い、以下の3条件で血液のサンプリングを行った。 尾鰭基部より直ちに採血、 頭部を叩いて即殺した後に尾鰭基部より採血、 FA100溶液(125PPM
80 )中において10分間麻酔した後に尾鰭基部より採血。それぞれの実験でサンプリングした血液はヒト用血中コルチゾールキットを用いてRI分析を行い、血中コルチゾール量(ng/ml)を求めた。
【結果】19尾すべての個体の捕獲から採血後水槽に戻すまでに要した時間は約45分であったが、その間、全ての個体において血中コルチゾール量の変動はほとんど認められなかった。この事から魚の掬い上げが他の魚にストレッサ−として与える影響は少ないと考えられる。次の実験における各条件下での平均コルチゾール量(ng/ml)は@;50.25±5.58、A;29.19±8.01、B;69.13±15.14となった。これより、ストレスを測定する場合には被験魚は採集後、直ちに採血を行う方がサンプリングによる実験結果への影響を低く抑えられることが示唆された。
角田篤弘・Ari Purbayanto・斎藤隆士・秋山清二・有元貴文(東水大)
【目的】漁獲行為遭遇資源の生残性について漁獲直後からの経時的なストレス変化や、脱出あるいは放流を想定した飼育試験によってストレス量の変化を検討する必要がある。本研究ではこぎ刺網で漁獲されたシロギスSillago
japonicaの血中コルチゾール量を指標とし、漁獲過程で負与されるストレスについて定量的な検討を試みた。
【方法】実験には千葉県館山湾においてこぎ刺網と釣りにより漁獲したシロギス(18.7±2.3p)を使用した。漁獲したシロギスは東京水産大学坂田実験実習場の流水式飼育水槽(1.1t)に収容した。シロギスからの採血は漁獲直後、実験水槽収容直後、1、2、3、12、24、48および72時間後に行い、RI分析によって血中のコルチゾール量を求めた。
【結果】こぎ刺網で漁獲直後のシロギスのコルチゾール量は平均で16.9ng/ml、水槽収容直後は51.9ng/mlであった。この値は水槽収容12時間後には143.0ng/ml、24時間後143.1ng/mlと増加し、その後は減少傾向を示して72時間後には36.2ng/mlとなった。またコルチゾール量を漁獲状態別にみると、網に刺さって漁獲された個体は12時間後に169.2ng/ml、24時間後に177.1ng/mlとなり、72時間後に59.3ng/mlまで減少した。これに対し、袋がかりで漁獲された個体は12時間後に128.3ng/mlとなった後、24時間後には64.2ng/mlまで減少した。一方、釣りで漁獲した個体では、収容直後は46.0ng/ml、12時間後は44.6ng/ml、72時間後は29.9ng/mlとなり、こぎ刺網で漁獲したシロギスよりも全般的にコルチゾール量が低く、早い段階で回復するだけでなく、時間経過に伴うも全体的に小さかった。以上より、漁獲時に魚が受けるストレスには羅網状態と網からの取り外し時におけるハンドリングの影響が最も強いことが示唆された。