「カリフォルニア沿岸湧昇域において沖合への炭素・栄養塩輸送に支配的な役割を担う中規模渦とフィラメント」という論文の掲載が決定しました。

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「カリフォルニア沿岸湧昇域において沖合への炭素、栄養塩輸送に支配的な役割を担う中規模渦とフィラメント: Dominant role of eddies and filaments in the offshore carbon and nutrients transport in the California Current System」という論文が米国地球物理学連合(AGU)のJournal of Geophysical Research Oceansに受理され掲載が決定しました。北太平洋の東岸域であるカリフォルニア沖では、夏期に北風が連吹し、エクマン輸送が西向きに岸から離れる方向に発生するため、沿岸湧昇が発生し下層から冷たくて栄養塩の多い海水が湧き上ってきます。このためこの栄養塩を利用し、動植物プランクトンが増殖するため沿岸湧昇域は生物生産の高い海域となります。湧昇してくる水には炭酸が多いのですが、それに抗して生物生産が高いので、有機物としての炭素が生成され死んで海底に沈むというCO2を海底に沈める生物ポンプの役割も活発な海域ではあります。したがって、どのくらい有機物あるいは無機物の炭素が沖合表層に広がるのか、あるいは沈むのかという問題は、海面でのCO2の収支に大きく関わるため大変重要な研究課題です。この問題を大規模な数値モデルをスーパーコンピュータを用いて計算し、調べたのがこの研究です。シミュレーションの結果、沿岸湧昇で下層から上がってきた高栄養塩水とそれに伴う生物由来の炭素は、カリフォルニア海流が蛇行しフィラメントを形成する事が沖合輸送の契機となること、そのごその冷水フィラメントが沖合の端で冷水渦にちぎれ、それらが暖水渦とともに豊富な炭素と栄養塩を抱えたまま西方へ、沖合へロスビー波として伝播することで沖合へ輸送されていることが明らかになりました。また、栄養塩は、多くが沖合への輸送時に光合成に光が利用できる有光層の下にフロントでの沈降現象で沈降してしまい、渦やフィラメントなどが活発であるほど、一次生産が減少するという、従来の定説とは異なる結果(Gruber et al 2011)を説明することができました。この論文は、初稿を書いた約10年前から紆余曲折を経て、共著者の強いバックアップのもとようやく掲載に至ったものです。