制御システム設計論

                                 

第一章 状態空間と状態方程式

  これまでの勉強で、われわれはすでに制御について多く接したと思います。制御理論に基づいた制御設計を行うためには、まず、制御対象の運動方程式(制御対象の運動特性を質こと)を書き出すことが必要です。さらに、制御では、運動方程式を伝達関数、または状態方程式にどちらにその運動方程式を書き換え、制御の解析と設計を行います。

 この授業は主に状態方程式に基づいた線形制御理論の展開を説明します。ここでは、復習も兼ねて、簡単な例題から説明していきます。

 

    例1−1 船の方向角度(ψ)と舵角(δ)の関係式(運動方程式) 

 入力: δ、 出力:ψ)

        伝達関数: 

        舵角 ―――> 船 ――> 方位

        (入力)          (出力)

 ここで、制御の観点から、われわれはこの制御対象入力と出力はそれぞれδ、とψです。

 

システムはさらに膨らんでいきます。舵角も機械で動かす必要があるので、一般的に油圧機構を用いる。そこで、油圧機構の運動方程式は

 

   12 油圧シリンダーのポンプに加える電圧vと舵角δの関係

               

        v――> 油圧+舵―――>船―――>方位(ψ)

    

            油圧シリンダ  

    圧力調整弁

                                                            

  油圧ポンプ           油圧サーボ弁

                   

 タンク

 

 

 そうすると二つの一入力一出力のシステムをつながると1つの大きなシステムとなる  

  対象全体の伝達関数は         

これは伝達関数を使う場合のやり方で、システムは一入力一出力であること、すなわち制御の結果は出力だけで判断する。 しかし、入力信号vから出力信号ψまでの間には信号δがあり、この信号の変化にも着目して、系の内部構成が応答にどのように影響するかをも考慮しようということが考えられてきた。要するに出力だけでなく、内部状態も含めて、二つの変数の変化を観察することが必要である。従って、出力も、中間変数もシステムの状況を表しているので、これらを状態変数という。

  この状態変数の概念を分かりやすい例は、多関節ロボットアームが挙げられる。

 

状態変数をひとつのベクトルで並べて表す。制御理論の本では、しばしば状態空間ということばを使います。つまりこれらのこれらの状態変数を、それぞれ各座標軸にとることによって空間を構成した場合、これを状態空間(State Space)という。例えば3次系の場合は 図 2.2 に示すような3次元空間で表現される。この時、ある時刻におけるこの系の状態は、その空間内の一点で示される。これを状態点という。以下のイメージです。いま、時と共に状態点は空間内に線を描きながら移動する。この線を軌道 (Trajectry)といい、この系の動的な挙動を示している。

\begin{figure}\begin{center}
\psbox[scale=0.40]{eps/2-1-2.eps} \end{center} \end{figure}

 


1−2 状態方程式 (多入力、多出力)

 高次の微分方程式、または複数の微分方程式を連立一次方程式で表す。    

1−3 船首方向制御の場合の状態方程式を求める

状態変数と入出力を とすると、

   

よって、二つの2次微分方程式を2つの一次微分方程式になる。これらを整理すると、以下の状態方程式になる。

           

例1−4 フィードバック系

             

図のようなフィードバック系の場合   

とかけるので、状態方程式は  

 となる。