制御システム設計論               

                               

第3章 状態方程式から読み取れるシステムの性質

           可制御性、可観測性、安定性  

 

例3−1 状態方程式  から分かること

1)が安定、

2)は不安定けれども、制御uによって安定化できる。

3)の軌道はuによって変えられません。

4)出力信号yから、状態を読み取れるが、そのほかの状態は分かりません。

 

例3−2 

   

1) が安定、不可制御

2)は不安定が、制御可能(安定化可能)

3)の影響を受けて、多分間接的に制御可能

4)出力ベクトルから、は直接分かるが、は足し算した結果の値しか分からない。

 

これらのことは、いわゆる、可制御性、可観測性と安定性のことを言っている。

 

数学の準備: ランク、固有値、固有ベクトル

 行列  のランクとは以下のどれかで判断できる

1)のn本行ベクトルbの中に互いに線形独立なベクトルの最大数、あるいは、のm本列ベクトルaの中に互いに線形独立なベ クトルの最大数を指す(両者は等しい)。

2)行列Pの中に行列式がゼロでない小行列の最大サイズ

 

 

線形従属: ベクトルが線形従属

     ==> 

     ==> 

 

固有値: 正方行列Aにたいして、

        

     を満たすsのn個の値をAの固有値という

 

  例: の固有値はそれぞれ

 

固有ベクトル:

  行列A の固有値任意の一つに対して、

      

  が満たすので、行列のn本の列ベクトル(或いは行ベクトル)が線形従属

ある。よって、

        (又は 

    を満たす列ベクトル又は行ベクトル)が存在する。これらを行列A の

  固有ベクトルという。

 

一般に、システムが        

であらわされたとき、ブロック図は

               

 

可制御性の定義:

 任意の初期状態と終端状態が与えられたとき、有限時間Tにおいて、状態

からへ移すような制御入力uが存在するなら、システムが可制御であるという。

 

[可制御の条件]

   システム()が可制御であるための必要十分条件は

    

 

証明: 必要性  可制御==>

        非可制御<==

    のどれかをいえばよい。ここでは、2番のことを証明しよう。

    仮定: 

      

        

      Cayley-Hamilton の定理

          が の線形結合で表せる

            

                   

二つあわせて、

          を得る

 非可制御の確認:

   初期値x(0)はを満たすものを選び、最終値はとする。

   可制御であるなら、可制御の定義により、以下の式を満たすuが存在する

    

上の式の両側に左から  を掛ける

      

一方、であるので、矛盾が生じる、よって、もとの式が成り立つようなuがもともと存在しないことがわかる、つまり非可制御です。

  十分性: == > 可制御

    証明したいことは、

         を満たすuがランク条件がするとき、求められることです。結論として、

    

   

可観測性の定義:

ある有限時間Tがあり、の間の出力y(t)と入力u(t)から、初期状態x(0)を一意に決定できるとき、システムは可観測である。

  

安定性について: 

 入出力安定: 有界な入力に対して、出力も有界で、発振しないシステムなら、安定である。

 内部安定:  u=0のとき、自律系が任意の初期値状態に対して、  を満たすとき、システム内部安定といい、

            のとき、漸近安定という。 

 

[安定性定理一]:

状態方程式 で表されるシステムが、Aの固有値がすべて負の実部を持つとき、 、即ち漸近安定である。

 

補助説明:Lyapunov安定判別法:

まずは例を見よう: ある2次のシステム、状態変数がの二つで、その解軌道が下図のようになります。

これは時間と共に原点0へ収束するから、安定なシステムです。さて、今この原点の周りに同心円を大きいものから小さいものの準にかきます。それぞれ軌道と交点がでます。これらの同心円の方程式は  なので、

     とする、明らかに

  1)、Vは正定

  2) (幾何的にわかる)

 

   [リアプノフ安定定理]      

   システムの解軌道xに関する正定関数 

   が解軌道に沿った時間微分が負なら、システムが安定である。