酸性地熱流体・超臨界地熱流体の発電用材料
下記の動画はアイスランドにおいてマグマ溜まりに到達した結果,噴出した地熱流体です。これを発電に利用した場合,100万KW級の発電が可能であると考えられています。現在、日本では国策として地熱発電の発電量を大幅に増加させようとしています。その中で、技術的なハードルが高く発電利用できなかった酸性地熱流体や超臨界地熱流体を用いて発電しようという取り組みがなされています。
IDDP(アイスランド深部掘削プロジェクト)で抽出された超臨界水からの蒸気等(2:30あたり)
例えば、下の図は2018年に示された国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が採択した酸性地熱流体研究テーマです。酸性地熱流体や超臨界地熱流体は材料を腐食させるため、多くの腐食を抑制する研究テーマが採択されていることが分かります。一般的な火力発電所等では厳密に管理された水を利用してタービンを回転させ発電しています。そのため高温高圧環境で使用される材料開発においては、高温強度(高温引張強度、クリープ強度)や水蒸気酸化に関する研究開発が中心でした。腐食性地熱流体を用いた発電はかなり特殊な環境であり、腐食性の高い流体中での高温腐食試験はあまりなされていません。私の研究室では、この環境における材料腐食の機構に興味を持って、適用可能な新しい材料開発を物質材料研究機構と共同で進めています。
今、私達がターゲットとしているのは地熱発電所の熱交換器用材料になります。最近、酸性地熱流体の蒸気をタービンに直接送り発電する方式(直接方式)とは別に、熱交換器を使用したシステム(間接方式)も選択肢の一つとして取り上げられるようになりました。間接方式において重要になるのは、耐食性に優れかつコスト的にも成立する熱交換器であり、その実現が課題です。東京海洋大学では、耐食性を有しかつスケール成長を低減した間接方式の熱交換法の調査を開始し、それらの材料の選定や材料開発を見据えた研究を行っている最中です。
2020年12月に静岡大学より超臨界水生成装置を譲渡され,超臨界水環境での材料腐食試験を行えるようになりました。今後,より一層の材料開発を進めていく予定です。
図 NEDOで採択した酸性熱水活用に向けた各開発テーマの位置付け(NEDO HPより引用)