このコーナーの,『伊豆諸島編@(2007年)』『伊豆諸島編A(2012年)』に続いて,4年ぶりの東京都伊豆諸島港湾計画の
調査で訪れることになった神津島.今は,伊豆諸島への羽田便は殆ど無いので,調布飛行場からの出発です.
神津島までのフライト時間は45分.機材は,ドイツのDornier 228.19名乗りです.





さすがに飛行高度が低いので,キョロキョロと眼下を見渡してしまいます.江ノ島が見えていますね〜
写真はこの通り,リコーGR 『HDR調』がちょくちょく登場します.





神津島の港を見渡すことができる展望台から.波頭が多く,海が荒れていることが分かる.実はこの日は西からの季節風が強く,
午前の飛行機も欠航,定期船も途中の荒天のため欠航していた.東京は穏やかな天気であったので意外でした.神津島に
なると,伊豆半島が風を弱める効果が期待できないため,この季節,たまにかかる事態に遭遇するそうだ.





展望台にありました電子基準点.背後の十字架は,慶長年間に,家康の恩寵を受けながら,
最後は神津島の流人となり,ここで没したキリシタン,『おたあジュリア』の記念碑です.
毎年,5月に『ジュリア祭』が開催されているとのことです.





展望台から港に近づいてみてビックリ.西20m程度の風となると,こんな波を引き起こすのですね.これでは船も接岸できませんが,
実は後で出てくる島東部の三浦漁港には,この日でも接岸できるとのこと.『一島二港』は,離島のシビル・ミニマムであることを改めて実感.





島北西部にある赤崎の施設です.今は誰もいませんが,夏はダイビングや橋上から飛び込む遊泳客で大変な賑わいとのこと.
「神津島 赤崎」で検索すると,夏の楽しいショットがたくさんhitしますね (^^)





『ホテル神津館』に宿泊.全ての部屋から西の海が見渡せるホテルです.これは早朝,沈みゆく満月を撮影しました.
本来,この日は昼過ぎに神津島から新島に渡る予定だったが,調布出発前に,船の欠航が分かっていたので,新島は諦め,
調布に戻ることになっていた.しかし,早朝,未だ風は収まらず,フライトがあるか否か,若干心配(+ちょっとワクワク)しました.





そして二日目の午前,東側にある三浦漁港を展望台から眺める.漁港といっても大型客船も停泊するので,船待合施設も整備されている.
『HDR調』の効果で,波の動きが何となく分かりますね.右から左に波が移動しているのですが,防波堤の影響で波が回折している様子が
見て取れます.遠くには,三宅島がぼんやりと.





神津島の天上山(標高572m).838年に噴火したそうだ.その26年後には,富士山の貞観大噴火(864年)が起きており,日本列島が災害の時代に
あったことが想像される.手前のモニュメントは,伊豆諸島を代表するカジキマグロ漁(突棒(つきんぼ)漁)を形どっているとのことです.
ちなみに,カジキマグロはマグロではありません...





天上山からは軽石など,噴火で堆積した砂が後から後から海岸,港に流れ込む.それゆえ,浚渫作業が欠かせない
とのこと.粒径が小さく,固着しやすい砂なので,ここの砂浜もとてもキレイだ.ということで,東京・お台場の砂浜の
表層や,海岸がなくて子供たちが海で泳げないという,利島の西防波堤脇の人工海浜にも使われている.後者は
最近の試みらしい.





この伊豆諸島編では,様々な護岸ツールが登場するが,これは三段重ねで出番を待つ被覆ブロック.消波ブロックと海底間に一層,
マットのように敷き詰めるのだそうだ.一個,5トン.モノトーン映像がマッシブさを引き立てる (?)





三浦漁港の防波堤,先端部.伊豆諸島はどこもそうだが,島自体が切り立っているので,この防波堤のすぐ海側はかなりの
水深らしい.ご担当の話によれば,『この突堤のケーソンは,漁港では,施工当時,わが国最大です』
とのことです.難工事であったのだろう.
堤防の上においてある消波ブロックは間もなく始まる潜堤用で,これも最大規模(80トン)らしい.





このような堤防群に守られて,三浦の漁業は順調な産業になっている.伊豆諸島全体の漁業産業規模は40[億円/年]だが,そのうちの
1/4は神津島が占めるのだそうだ.神津島で漁業を専門とする方は約200名で,島民数の1割に及ぶ.
また,以前は海が荒れると漁船が痛むので,下田に避難していたとか.そもそも江戸時代に確立した東廻り廻船は,東北から江戸に向かうとき,
房総半島を鋭角に回頭できないため,一旦,下田に入り,逆向きの風が吹くのを待って江戸に出帆したそうだ.最近読んだ,『江戸の都市力』
(ちくま新書)に出ていた.その他,江戸をめぐるインフラ整備(ハードもソフトも)の話題が豊富な本です.読むべし!





出発前に,神津島港の船待合所(『まっちゃーれセンター』)の前にある,『よっちゃーれセンター』2階のレストランで煮魚定食(1,000円)を
食べた.今日の煮魚はキンメダイだ.大ぶりで,身の締りも良く,大変美味でした.ちなみに,神津島漁業で一番の売上シェアを誇るのが,
このキンメダイです. こちらも是非!





そして再びDornier 228に乗って,神津島を後にしました.やはり風が強く,波頭の白さが目立ちますねぇ.


本稿,2017年最初の『交通写真集』でしたが,なんと,2016年は休業してしまいましたね (T_T).確かに,昨年は,アジアだけ
(韓国,ベトナム,台湾)だったので,チャンスがありませんでした.ソロソロ次のステップとして,国内編を中心に,例えば
『トマソン』にでも模様替えしようかな...






さて,1月の前回は,海が荒れて行けなかった新島に日帰りで行ってきました.このシリーズはこれまで全部,一泊二日でしたが,
初めての日帰りです(調布飛行場 8:30発,帰りは16:55到着).
往路,左側に富士山.『あーたまーをくーもーのうえにだし♪』という歌詞そのもの.






新島港を高台から望む.だいぶ整備が行き届いた港です.他の伊豆諸島と違って,砂浜に恵まれた島だ.この写真でも,
湾の右半分は海岸砂浜である.人口は二千数百人だが,夏場は極端に島外客が多いらしい.
右の島は無人島の地内島,左手前が式根島,その奥に見えているのが1月に訪れた神津島だ.
以外なことに,地内島が最初にできたとか.新島も,886年に噴火しているが,以前は,地内島とも陸続きだったらしい.






前の写真の海岸砂浜の場所です.この日は天気にも恵まれ,大変キレイな海の色でした.
この桟橋は,かなり初期に作られたもので,今は子供たちの飛び込み台や,釣り客の場所として使われているそうです.
テトラポットが沖に配置されており,波も静穏だ.






新島村博物館に展示してある『棒受網』のジオラマ模型.江戸時代に,新島出身の植松三郎平が考案したとか.
その他,様々な資料が展示してあり,面白いです.行くべし!






島の南西部にある,『石山展望台』に行く.『石山』の意味は,島の名産品コーガ石(抗火石)の採掘跡地である.荒涼とした風景が
広がるので,『映画のセットに使ってもらいたいなぁ』(以前,ここの駐在歴のある東京都の方の話)とのこと.
この石山展望台に到着する前に,防衛庁の施設を見かけた.なんでも,島の南にロケットの試射台があって,時々使われるらしい.






羽伏浦海岸.大変綺麗な真っ白の砂浜が延々と続く.日本のサーフィンのメッカの一つ.もともと新島は,南北で
異なる2つの島(火山)からなっていて,南側は白い岩肌,北側は比較的黒っぽい岩肌となっている.この海岸は,
白い岩が主成分なのだろう.






同じく,羽伏浦海岸だが,左の建物はサーフィン大会などで使われる大会本部や表彰台である.2020年の東京オリンピック会場に
立候補していたらしいが,結果は残念なことに.サーフィン場所としては文句のつけようがないが,宿と交通のキャパシティに難があるのだろう.
そういえば,自転車競技の修善寺・サイクルスポーツセンターは大丈夫か? マウンテンバイクの来客数二万人が心配.






新島には,いたるところにこのような石のモニュメントがあるし,同じ石で作られている家も多く見かける.これは前述のコーガ石で,
新島と,イタリアの小さな島でしか産出しない,世界でも珍しい石だ.とにかく,釘で引っ掻けばドンドン削れてしまうので,大変加工が
しやすいとか.
そして1977年に,これらのモニュメントに,『モヤイ』という名前が付けられた.モアイ像のもじりで,「もやい」は力を合わせる,もしくは
船をもやう という意味とか.それで思い出しましたが,渋谷駅の西側に,このモヤイ像がありますね.兵藤は今の今まで,てっきり
モアイ像だと思っていました ^^;






島北部の若郷漁港です.これも大変シッカリ作られた港です.この日は漁に出ていたのか,漁船を見かけませんでした.
左奥に見えているお椀型の島は利島です.






利島とドロス.利島の切り立った地形が印象的ですね.






新島ガラスアートセンターです.実際に,コーガ石を用いたガラス細工を行っていて,その工程を見学することができる.
ガラス製品の製造過程を目の当たりにできて,体験コースもあります.内部は写真撮影禁止だったので,緑の美しいコーガ石
によるガラスの紹介はここへ






帰りの新島空港前のモニュメント.もちろんこれもコーガ石.新島らしい演出ですね!



さて,『伊豆諸島編』ですが,
 ・2007年10月: 大島・利島
 ・2007年11月: 八丈島・青ヶ島
 ・2012年10月: 御蔵島・三宅島
 ・2017年1月: 神津島
 ・2017年3月: 新島
と訪れました.これで(式根島を除いて)全島を回ったことになります.それぞれの島固有の歴史と風土があり,
大変印象的なシリーズでしたが,最も心に残るのは,厳しい自然と共存する住民の皆さん,そしてそれを支える
べく,コツコツと港づくりに取り組む東京都港湾局離島港湾部の方々の姿でした.
ありがとうございました.