上記のように衛星搭載型センサーによって多くのパラメータが測定・推定されています。当然のことながら衛星観測データを利用した研究は数多ありますが、以下に海洋学において衛星観測データを主に利用して行われてきた研究(主に日本の研究者による)を一部挙げます。これだけでも海洋の流れ、海氷から漁場にまで多岐にわたって衛星RSが利用されていることがわかるかと思います。
- 流速ベクトル・氷速ベクトル
Kimura et al. (2013, Polar Research):
AMSR輝度値データへの粒子追跡法の応用した海氷速度が推定されている。大気と海洋の運動量交換において、
海氷運動の理解は必須である。
Mizobata et al. (2010, JO):
TOPEX・Jason-1による海面高度変位による、海洋流速の順圧成分・傾圧成分を推定した。
海洋観測の維持が困難な海域において、準リアルタイムで海洋の流速を推定することに成功した。
- 海氷生産量
Tamura et al. (2008, GRL):
SSMIとAVHRRのデータを用いた、海氷生産量推定アルゴリズムが作成されている。
海氷生産量は、海洋深層循環の出発点である高密度水形成の理解につながる。
- 海洋混合層と貯熱量
Mizobata & Shimada (2012, DSR2):
表層混合層内水温と仮定したAMSR-E海面水温と、大気-海洋間熱収支のそれぞれの時系列変動から
表層混合層厚とその貯熱量を推定した。結氷前の混合層内貯熱量の把握は、どの海域で海氷形成が
遅延するかを判定する材料となる。
- 光学 (e.g., Matsuoka et al. (2013, Biogeoscience) and more --> Dr. Matsuoka's page)
- 栄養塩
Goes, J. I. et al. (2000, GRL)
現場データから見積もられた硝酸塩と水温・クロロフィルの関係に基づいて、衛星データから海面の
硝酸塩濃度分布を見積もっている。
- 海洋基礎生産
Behrenfeld & Falkowski, (1997, Limnology and Oceanography); Kameda & Ishizaka (2010, JO)
海洋の炭素循環は海面クロロフィル-a濃度だけでは議論できない。有光層内の基礎生産量を海色・
海面水温から推定している。
- 植物プランクトン種判定
Hirata et al. (2011, Biogeoscience); Fujiwara et al. (2013, Biogeosciece)
海色データから珪藻や渦鞭毛藻などの種別にクロロフィル-a濃度を推定している。
- 物理場と植物プランクトンの関係
Sasaoka et al. (2002, DSR2):
ENSOイベントにより、西部亜寒帯循環のクロロフィル分布が変動していることを明らかにしている。
Mizobata & Saitoh (2004, JMS):
海面高度計・海色データを用いて、ベーリング海陸棚斜面域における海洋基礎生産が、
中規模渦の分布に依存していることを明らかにした。
Iida et al. (2007, DSR2):海色データへの主成分分析の応用
衛星データへの主成分分析から、ベーリング海のクロロフィル分布がアリューシャン低気圧に依存
していることを明らかにしている。
- 漁場推定
Kiyofuji & Saitoh. (2004, MEPS):
DMSP/OLSによる夜間可視画像により得られたスルメイカ漁船分布を統計的に区分することで
スルメイカの回遊経路が特定されている。
Zainuddin et al. (2006, DSR2):
海面高度・クロロフィルのデータから、ビンナガの空間分布が推定されている。
|