地熱:スケールに関する研究

「海洋大学でなぜ地熱か?」

地熱流体の一部は実は海水が起源となっている場合が多くあります。海水由来の地熱資源ではスケール(湯の花)による配管の詰まりが問題になりやすいです。日本は温泉国にもかかわらず,スケールの研究は少なく,スケールの形成機構についてはほとんど理解されていません。











私の研究室では,地熱発電所や温泉給湯配管において形成されるスケールの微細構造解析を行っています。特に,地熱流体や温泉が流動している配管等に対して最も初期に形成される物質に注目して研究しています。

ここでいう微細構造とは

・結晶構造(どの鉱物に似ているのか?)
・分子構造(どの結合が多いのか?)

です。下記に研究内容を詳述していきます。微細構造解析の論文については現在執筆中でして表に出せませんので近日中に追記します。


スケールと地熱発電

地熱発電は安定した操業が難しく,建設されたものの実際には設備容量として期待された発電量を大きく下回る可能性があります。そのような安定操業を阻害する大きな要因の1つはスケールであり,配管閉塞や熱交換の低下を引き起こします。スケールとは地熱水を輸送する配管等に沈着した物質のことです(図1)。スケールは長期間放置していると成長し,詰まってしまいます。そのため,地熱発電所ではスケールの除去のためのメンテナンスをある一定期間で行っており,そのメンテナンスコストやメンテナンス中の売電量の低下によって発電単価(電気の値段)があがってしまうことが大きな問題の1つです。

図1 ある実際の地熱発電所でサンプリングした要素部品上のスケール 


スケールとして一番初めに材料表面に付着する物質は?

材料がスケールで覆われてしまうと抑制効果は無くなるため,材料表面に最初に付着する鉱物相の付着を抑制することが重要です。ほとんどの温泉地域でスケールの主成分は炭酸カルシウムですが(JOGMEC:「小規模地熱発電プラント設計ガイドライン」北野康:温泉工学会誌,2(1964), 45-49.),実は材料最表面に付着している鉱物相については明確でありません。例えば,長崎県雲仙市小浜温泉では炭酸カルシウムを主成分とするスケールが形成される有名な地域でしたが,私たちの研究で小浜温泉においては材料最表面スケールの鉱物相はシリケートであることを明らかにしました。現在,全国の地熱熱水・温泉水についてどのような泉質では材料表面の初期付着物質が何であるか等を整理し,スケール形成機構を明らかにしようとしています。

図2 長崎県雲仙市小浜温泉でサンプリングしたスケール形成した配管(解析のため図1(a)の配管を切断している。)


スケールの模擬手法の確立

上記で省略しましたが,実際の地熱発電所や温泉地域で採取したスケールの結晶構造と分子構造を解析しています。私の研究室では,その採取したスケールと同じ構造を実験室で模擬することを試みています。現在,材料にしろ薬剤にしろスケール抑制効果があるかどうかを確認する方法は現地に行って実際に使用するしかありません。しかし,そのような状況では研究開発速度が遅くなります。そこで,盛田・山口によって現地スケールを模擬する装置を開発しました。この装置を使用することで現地スケールに近い構造を模擬することができ,研究開発スピードが早くなることが期待できます。現在,現地スケールを模擬度を向上させる研究開発を行っています。

図3 現地スケール模擬装置(特許出願中であるため使用されたい場合はご相談ください。)



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