船内の電源として、あるいは電機推進船の動力源の1つとして、大陽雨量の電池を採用する事例が増えています。これらは船員の労務改善や省エネルギーを実現する手法と考えられているようです。これらのシステムは、実に多種多様で、船種や船のサイズ、航路に応じて進化する生命体のようです。当然、さらなる環境(海運状況の変化、技術の変遷、鋼材価格の高騰、技術者不足、国際規則や国内法の改訂など)の変化によって淘汰されゆく種も多くあるでしょう。しかし自然淘汰による結論を得るには時間がかかり過ぎ、歴史を語るだけではビジネスのスピードに追いつきません。
そこで、本研究グループでは電池を採用した船舶推進システムが期待通りの性能を発揮しているのか、あるいは想定外の効果をもたらしていないか、検証を進めています。本物の電気推進船とそっくりの振る舞いをするシミュレーションモデル(ディジタルツインともいいます)を構築し、その性能をPC上で評価します。さらに実践で計測されるデータと比較し、計算結果の妥当性評価も行います。その先にシステムの制御手法やパラメータ設定を変更し、より高い性能を引き出すための設計も試みます。
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内航船向け陸電供給システム
「陸電」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?船舶は船内の電源需要を賄うため、船内に大型の発電機を複数搭載している事例多いです。そして、停泊中もその発電機で船内の様々な機器に電力を供給しています。しかし発電機から出る騒音や排気ガスに対して陸上側から不満を寄せられることがあります。この対策として、停泊中は船内の発電機を停止し、代わりに陸上の電気網から(皆さんのご家庭と同じように)電力を受け取る仕組み「陸電」が昔から使われてきました。近年では環境対策の一環として国際的にも高い注目が集まっており、大型のコンテナ船コンテナ船に対する「陸電」供給が一部で導入されています。ところが、この「陸電」設備結構費用のかかるもので、地方自治体の予算審議を易々と通過しないのが現状です。もちろん課題はその他にも山積みで、規則や規制、利用者の資格、受益者負担の具現化、船舶側の設備更新、などなど多岐にわたります。本研究では特に技術的観点から、より簡単で低コストに「陸電」を導入するための一手法を提案しています。実際に内航船舶の船主さんやオペレータさんの協力を得てリアリティのある研究を心掛けています。
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ビッグデータから読み解く可変ピッチプロペラの特性解析
「どうして電気動力研究室でプロペラの解析を始めたの?」と良く聞かれます。ごもっともな質問です。これまで私たちは電気推進システムやハイブリッド推進システムについて研究してきました。そして、これらの推進システムについて深く考えれば考えるほど、「プロペラ」の特性を把握する必要があると感じてきました。
そこで、流体力学を専門としない私たちではありますが、電気屋の視点からプロペラの特性を解析することにしたのです。本学所属の練習船で蓄積された膨大なデータを解析すると、驚くような特性が次々と明らかになってきました。もう、これがヨダレが出るほど楽しいんです。研究の成果は少しずつ学会等で公表する予定です。
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日本国内の漁船の多くは20トン未満の小型船に分類されます。これら小型船では、専任の機関士を乗船させる必要が無いため、運航コストが低くできます。一方、十分なメンテナンスがなされない場合があるため、エンジンや発電機関係のトラブルも多く発生します。加えて、船舶用の省エネ装置は大型船むけばかりで、かなり高コスト。燃費消費の節減は世間で思われているほど簡単ではありません。
そこで、私たちは「導入か簡単であること」「低コストで実現できること」「通信の安定しない海上でも実現可能なこと」という複数の課題に向き合い、技術開発をしています。それが「ちょっとお得」な運航方法を提案するための技術開発です。将来的にはその機能をスナートフォンだけで実現したい。「銀行から何千万という多額の融資(借金)を受けて省エネ設備を導入し、数%の燃費改善を得る」これが今までの省エネでした。しかし私たちは「毎月1,000円で1%の燃費改善をした方が良い」と思っています。多くの造船工学の専門かに鼻で笑われます。だからこそ、やる価値がある。現場に寄り添った反骨精神が私たちの研究を支えています。
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誘導加熱は英語でInduction Heating。日本ではIHと略称で呼ばれます。そう、IHクッキングヒーターやIH炊飯ジャーが私たちの身の回りにありますね。誘導加熱技術は非接触で金属類を発熱させる技術で、キッチン回りだけでなく、様々な産業で使われています。一般的に誘導加熱をするには高周波インバータが必要です。私たちの研究グループでは、高効率で高性能な高周波インバータの開発を行ってきました。また、誘導加熱技術に関連する多くの企業の支援も行っています。
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水中探査機の動力源としてリチウムイオン電池を用いることが多いですが,その電池交換は容易ではありません。中でも,支援母船への探査機の引き上げ作業は,潜水士にとって危険な作業です。本研究室では,ワイヤレス給電技術を用いた給電ステーションを水中に設置し,探査機の電池の充電過程が水中で完結するシステムの構築を目指しています。探査機の着底位置や向きに関わらず安定した給電を実現するために,複数の送受電コイルの配置や複数電源を有するシステムの構築,送受電間が独立した電力変換器の制御の実現を目指しています。また,ワイヤレス給電には電気回路の共振現象が利用されますが,共振現象の振る舞いを理論的に捉えることも挑戦中です。
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タグボートはコンテナ船、原油タンカー、LNG運搬船、その他の大型船舶が安全に港に着岸・離岸できるようサポートする特殊船舶です。さほど大きくない船体に桁違いのパワーを持つエンジンを搭載していることが特徴で、大型船が出入りする港では、必ず見ることが出来ます。大出力のエンジンは数十万トンの船を押すのに欠かせませんが、いつもハイパワーが必要なわけではありません。必要な時に必要なエネルギーを効率よく生み出すことが省エネの第一歩。これを実現するため、タグボート向けのハイブリッド推進システムを提案し、その燃料消費節減の可能性について解析をしました(研究は終了しています)。
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リチウムイオン電池は、あらゆるポータブルデバイスの電源として用いられることで、大量生産が進みました。その結果、性能は向上し、価格もこなれてきています。電気自動車のみならず、船でも使えるのでは、と考える人がいるは不思議ではありません。私たちが参画する研究グループでは、電池を主なエネルギー源とする小型船の可能性について研究してきました。そして2009年に国内最初の急速充電対応型電池推進船「らいちょうI」を建造しました。私たちは建造した電池推進船を小型客船に見立て、航海スケジュールに余裕を持たせ、充電作業時間を最小化するためのエネルギーマネージメントについて研究しました。(研究は終了しています)
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船舶用燃料消費シミュレーションの開発
自動車の世界ではハイブリッド自動車や電気自動車の車種が増えています。大型船舶の世界においても、プロペラを電動機で駆動する電気推進船の推進システムのプロジェクトが目立ち始めました。
ところが最も大事な燃料消費特性を冷静かつ冷徹に見つめるサイエンスの目、評価の目が満足でない事例が散見されます。この理由は、評価手法が確立していないことが一因と考えられます。
そこで、私たちの研究室では、真に気候変動防止となる技術の開発を後押しするため、ハイブリッド推進システムも含む新型推進システムの燃料消費特性を評価するためのシミュレーションの開発を行っています。(本研究は終了しています)
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