物理海洋学U

2019年度前期前半)

2019年5月30日 update:

 

担当:島田浩二(9号館501)

WEBページ:

http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/

今年度は、講義毎に身近な現象を題材に「コーヒーブレイク」
として、現象の面白さ・美しさを紹介してゆく予定です。


海洋学の最前線(4/18 2限 島田担当分の資料)
 

レポート締切は、4/26(金)17:00⇒5/7(火)12:00に変更します。

 


 定期試験(6/10)について: 

「手」で書いたA4用紙2枚の資料の持ち込み可。裏表を使って構わない。

印刷されたものは持ち込み不可です。

この資料も定期試験答案用紙とともに提出。資料は、定期試験の30%の配点とします。

宿題(レポート):30%

定期試験70%(49%が試験問題、21%が上記資料の内容)


他の講義のページ(参考):
◎筑波大学 「海洋学」の集中講義のページ:
 http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/Tsukuba/

 筑波大学地球学類を中心とした、海洋物理・気候学の講義です。

◎早稲田大学 「海への誘い」の講義資料:
 http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/waseda2013.ppt


第1回(2019 4/8)
資料:00_Introduction.ppt
講義の概要。イントロダクション。

第2回(2019 4/10)
コリオリ力とは? 自分が反時計回転しているから、回転していないものは、時計回りに回転して見える。それだけのこと!

大事なことは、回転して見える物の周期は、回転台の1/2、回転角速度は2倍であること。

イメージを忘れずに! この動画をインプット!⇒Coriolis.flv

○コリオリの力のもっときちんとした動画資料(2.8GBあります):VR_MOVIE.mpg

ファイルサイズが大きいので、ダウンロードに時間が掛ります。

そのままの場合、Windows Media Playerで再生できます。

拡張子「.mpg」を「.VRO」に変更すると、DVD再生ソフトで閲覧できる。


 第3回(2019 4/15)
基礎方程式

資料:01_Basic_Equations.ppt

<コーヒーブレイク>冒頭にお話しした、今接近している台風21号の話:p20171020.pptx

同時進行している、地球の今を考えると、興味がわくし、理解が進む


 第4回(2019 4/17)
基礎方程式続き(運動方程式:Euler方程式[圧力、コリオリ力、重力]、地衡流近似、静水圧近似)

資料:01_Basic_Equations.ppt

<コーヒーブレイク>:p20171027.pptx

台風22号接近中! 視点を変えて、今年の台風の発生場所、移動経路の特徴。

2015年と2017年に日本に襲来する台風には違いがあることが、地球スケールで見れば何故なのかが分かる。

その違いの根本は、海の水温分布の違いにある。赤道域での変動との関係、エルニーニョ&ラニーニャ。

<おすすめの読み物>

気象学会のホームページになりますが、気象のABCというコーナーがあります。

リンク:気象のABC

今回の講義までに関わることとして、読むとよいものは、

No.1 風のいろいろ

No.4 波のいろいろ

No.22 コリオリ力の「ユリイカ」

です。

問題が解けて、「できて」、うれしいという気持ちもありますが、これからは、「分かる」という快感を重視しましょう。

「分かろう」としてきた先人の「分かり方」が書かれています。物理・数学というと、難解というイメージがある学生もいると思いますが、

数学は分かるための道具(=言語)と考えると、便利なものであると気付かされると思います。

道具も使いようで、海洋物理・気象学では、むっちゃ小さいもの(小さい×小さい)はカットの精神です。

そうすれば、楽に解けてしまいます。いい加減ですが、これこそ、物の理を捉える極意⇒「物理」です。


>>>これまでの関連した コーヒーブレイクOLD <<<
2017年10月6日に襲来した台風
まずは、海面水温、黒潮が流れている場所に注目してみよう。
10月6日の関東・東海海況速報@一都三県漁海況速報 - 神奈川県農林水産情報センター
141006.png

黒潮本流は、潮岬から真東に向かって流れ、八丈島でその方向を北北東に転じ
房総半島沖に向かっている。このパーターンを頭に焼き付けておこう!
そして、台風18号の進行に伴う、降水分布のアニメーションを見てみよう。
radar.gif

降水分布は時々刻々動いているが、あまり変化していないところがある。
「潮岬〜八丈島〜房総半島(外房)」に注目してみよう。
何か見えてきたかな?

このように、大気現象(気象)は、その下面境界の海の状態に大きく左右されていることが分かる。
黒潮流路のパターンが変われば、降水分布も変わってしまう。
雨が(変化せずに)降っているところは、海面水温が大きく変化しているところ(高水温⇒低水温)になっている。


 第5回(2019 4/22)

スケールアナリシス、静水圧近似


 第6,7,8,9回(2019 4/24, 5/8, 13, 15)


非回転系の浅水重力波、回転が影響を受けた慣性重力波、慣性振動
資料:02_Gravity_Waves.ppt

深層水の形成(地球科学概論Uの話を振り返る:スライド番号83以降)
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/CKG2
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/CKG2/CKG03.pptx


ケルビン波

資料:03_Kelvin_Waves.ppt


 連続方程式の重要性(モグラたたきゲーム)
資料:
mogura.ppt


第10回(2019 5/20)
角運動量の保存、渦位の保存、ロスビー波のエッセンス
資料:04_Potential_Vorticity.ppt

コーヒーブレイク資料:LaNina.pptx

ラニーニャだから寒いのか? 確かめてみる演習:http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/YCU (@横浜市立大学での授業)


第11〜12回(2019 5/22, 27)
地球流体力学の3種の神器(地衡流、渦位の保存、ロスビー波)、その効用。

資料:05_QGPV_equation.ppt

○大気から海洋への渦度注入と

  西岸境界での渦度散逸(陸岸境界からの正の渦度注入⇔遠州灘での黒潮蛇行)

  黒潮続流域での流れの蛇行と暖水塊、冷水塊による海洋大循環加速の停止

○黒潮の蛇行パターンの移動と蛇行スケールの関係

    2013年5月後半の黒潮の挙動(アニメーションgifファイル 3MB)、2013年2月〜5月の黒潮の挙動(aviファイル 49MB)

○浅瀬に乗り上げた黒潮水の挙動と相模湾への黒潮水侵入

    2013年度 海洋学実習U 教員レポート(PDFファイル 2MB)

○偏西風の蛇行と、その停滞⇔異常気象

 冬は、3波(おにぎり型)が停滞しやすい(⇒00_Introduction.ppt05_QGPV_equation.ppt


第13〜14回(2019 5/29, 6/3)
資料:06_Ekman_Circulation.ppt

資料:渦度方程式&エクマン層⇒スベルドラップバランス

○海洋大循環(スベルドラップバランス、西岸境界流)

○エクマン層の力学


 第15回(2019 6/5)
資料:07_Last.ppt

本講義の目的を振り返り、総合解説

○不安定論(順圧不安定、傾圧不安定、KH不安定のエッセンス)

○海洋大循環の実際の北極海への適用

○海洋物理観測の心得(物理的な考えをもって、サンプリング間隔等、観測設計に活かさねばならぬ)

-->現場観測や実験ほど、力学の素養が必要


CTD観測は物理観測?
CTD観測が物理観測であるかどうかは、区別する必要はありませんが、CTDデータと海洋物理が結びつく1つの側面として、密度分布を通じて地衡流が計算できることにあります。

現代の海洋学のルール(Thermodynamic Equation Of Seawater - 2010 (TEOS-10):http://www.teos-10.org/)では、電気伝導度から求めた実用塩分(PSUもしくはPSS)なのか、もしくは、単位質量(1Kg)の海水にどれだけの塩(g)が含まれているかであらわされる絶対塩分(g/Kg)を区別するようにと勧告されている。暗黙の了解ではあるが、これまでの論文でPSU、PSSを付けていない塩分については、電気伝導度から計算された塩分と考えるのが妥当(であろう)。太平洋深層の地衡流計算をするときは、後述する絶対塩分(‰もしくはg/Kg)を用いましょう。塩分には、次元が無いのです。観測では、PSUであるか‰もしくはg/Kgをきちんと付けましょう! 

ルール改正された理由は何か? 海洋学実習UテキストのP11-12を読んでみよう。密度に対し大事なのは、単位質量(1Kg)の海水にどれだけの塩(g)が含まれているかである。もし、塩分に(g/Kg)が付いていたら、それは絶対塩分を意味していると考えましょう。絶対塩分とは、本当に、塩の重量比を示したもので、これが、密度計算に必要な塩分です。含まれていても、ケイ酸塩などは電気伝導度がないので、海水の密度を増加させる効果があっても電気伝導度を増加させる効果はない。ここが問題なのです(⇒詳細は新海洋学実習Uテキスト、PassはArctic)。

リンク:2014年度海洋学実習Uのページ


地衡流とダイナミックハイト(Dynamic Height)、Steric Height、ジオポテンシャル  

さて、地衡流は、ジオポテンシャル、Steric Height、Dynamic Heightのいずれかを求めて、地衡流の式より、それら空間微分により計算されます。

ジオポテンシャル(Φ): gη [m2/s2] --->ポテンシャルエネルギー(mgh)と似ているよね

Steric Height: η [m] --->海面での値は水位そのもの

Dynamic Height: gη/10 [m2/s2] or [dynamic m]--->重力加速度gを10としたええ加減なパラメータ。でも、9.8も10も差が無いと気にしない、大局が大事な海洋物理では、OKでしょう。次元は長さ[m]ではなく、ジオポテンシャルと同じ[m2/s2]、もしくは、海洋分野独特の[dynamic m]を使う。

世界の海の最強の流れの1つである黒潮を横切る水位差(η)は80cmほどです(http://www-pord.ucsd.edu/~ltalley/sio210/images/pac0dbar.jpg)。これは、亜熱帯循環の最高水位と最低水位の差になります。この水位差で数ノットの流れになります(1ノット〜50cm/s)。

世界七つの大洋の1つで最も小さい北極海(洋)の海洋大循環は、強流域でも黒潮の約1/10。つまり、水位差は、せいぜい10cmとなります(資料)。衛星による海面高度観測により、50cmもの水位差があるという報告もありますが、どこか基本中の基本を間違えているはずです。あり得ることとあり得ないことは、スケールアナリシスで判断できます。このあたり、海洋物理のスタートライン立つ初めの一歩として大事なことです。

計算法などは、2014年度海洋学実習Uのページ