1 タンパク質の糖類による修飾
プロタミンあるいは魚肉タンパク質をデキストランやグルコース-6-リン酸と反応させ,抗菌性,乳化性をはじめとしたタンパク質機能の改善を図る。
2 魚肉練り製品の品質改良
冷凍すり身にショ糖エステル類を添加し,練り製品の品質向上を目指す。
3 可食部(生分解性)フィルムに関する研究
水産加工現場から廃棄されるタンパク質からから可食性(生分解性)フィルムの調製と性状の改変を検討。
4 加熱魚介類肉の最終到達温度の測定
水産加工食品の安全性を確保するために不可欠である、製品の最終到達温度を測定する方法について検討。
5 アンチョビーの熟成に関する研究
缶入りアンチョビーの熟成度を測定する化学指標の確立と熟成過程の解明。
6 魚肉ゲル形成能の周年変動に関わる研究
長崎県において一般的なねり製品原料であるマアジ,および磯焼けの原因生物とされているアイゴおよびイスズミのゲル形成能の周年変動を解明した。
7 魚肉の低温保存耐性に関わる研究
とくに,魚肉すり身の冷凍耐性について,「糖類やタンパク質加水分解物がすり身中の水の存在状態に及ぼす影響」および「水の存在状態がタンパク質の変性に及ぼす影響」という「添加物−水の存在状態−タンパク質の変性」といった3者間を関連付けながら研究を行なった。
8 魚肉の乾燥耐性に関わる研究
また,魚肉すり身の乾燥耐性についても「添加物−水の存在状態−タンパク質の変性」といった3者間の関連をもって研究を行なった。
9 魚肉発酵食品に関わる研究
農産物で一般的に用いられている発酵技術を水産物に適用するための研究を行なった。
10 魚肉中の脂肪酸組成に関わる研究
水産加工残滓や低・未利用水産物の高付加価値化の観点から,機能性脂肪酸として知られる,ドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸(AA)の水産生物組織中の存在状態を明らかにし,併せて餌料生物中のこれら脂肪酸との関連について研究を行なった。
11 アナアオサの有効利用に関わる研究
環境問題となっているアナオサについて,これの有効利用策開発の一端として,アワビおよびムラサキウニの餌料としての有用性を明らかにした。とくに,ムラサキウニに対する餌料としての活用は,アナアオサの問題のみならず,磯焼けの対策にもあり,一石二鳥であるが,このことについて現在普及活動を行なっている。
12 海洋環境改善のための水産利用学的観点からの総合的な研究
大きな意味での水産業の一部としての水産利用学の意義は重要であると考えている。現在行なっているものの一つに磯焼け原因生物の有効利用法の研究がある。「磯焼け」とは,有用魚介類の成育の場として,また,海水浄化機能として重要である沿岸海域の藻場が消滅する現象であり,世界中で最も深刻な環境問題の一つとされている。この原因は未だ未解明の部分が大きいが,確実な一つの原因として,生物による海藻の食害が挙げられている。この生物には,近年の海水温を中心とした海洋環境の変化により,繁殖活動が活発となったアイゴ,イスズミ,およびブダイ等の魚類,ムラサキウニ,およびガンガゼ類等のウニ類が挙げられている。一方で,これら魚類については,特有の臭気を有するため,そのままでは食用に適さない。また,ムラサキウニについては,磯焼け海域に生息するものは身入り(全体重に対する可食部の割合)が低いため,漁獲対象とならない。これら魚類やウニ類に,加工技術を用いたり,また,養殖により身入りを改善することにより,付加価値を与え,漁業による漁獲対象種とすることにより,増えすぎた資源量を適切な範囲にまで減らすことが出来るものと考えている。